サウジアラビアの石油施設への攻撃で原油価格が上昇し、天然ガス市場への波及を懸念する声もある。現在のところ、天然ガスのスポット価格が低下傾向にあるが、果たして今後の市場動向はどうなるのか。そして、他の資源価格などにどのような影響があるのだろうか。
天然ガス需要は中長期的に緩和状態が続く
そもそも天然ガスとは、メタンを主成分とした比較的軽い炭素化合物で構成された気体のことを指す。そして、LNG(Liquefied Natural Gas)とは天然ガスを冷やして液化したものである。
LNGは原油に比べて25%程度、石炭に比べて40%程度、二酸化炭素の排出量が少ないとされており、環境にやさしい化石燃料として注目されるようになった。加えて米国の「シェール革命」で安価な天然ガスが大量生産されるようになり、LNGは大きな関心を集めるようになった。
天然ガスは環境に優しいことに加え、原油などと異なり比較的資源の偏在性が少ないことから、開発が急速に進んでいる。
英石油大手のBPが昨年発表した2017年から2040年までの超長期見通しによると、天然ガス、原油、石炭などの一次エネルギー(自然界から採取されたままの物質を源とするエネルギー)の需要は32.3%増加するが、天然ガスだけでみると増加率は46.3%に達する見込みだ。
さらに一次エネルギーの需要の内訳をみると、原油のシェアが33.6%から27.2%に低下する一方、天然ガスは23.4%から25.8%に上昇する。今後も引き続き原油が一次エネルギーとして重要な位置を占めるものの、天然ガスの重要度は年々増えていくのは確実である。
天然ガスの生産・輸出国は豪州、カタール、米国、ロシアなどである。すでに複数の大型プロジェクトが進んでおり、それらが計画通りに稼働すれば、2020年頃には需給が緩和することになるだろう。2022年~2025年には中国およびインドなどの新興国の需要が増加するとみられるが、それらの需要を見込んで新たなプロジェクトも立ち上がることを考えれば、2030年頃まで需給は緩和状況が続くのではないだろうか。