“ボリュームゾーン”である新興国市場でも、サムスン電子は苦戦を強いられている。

 まず、同社のスマホは中国で競争力を失ってしまった。中国では、ファーウェイやオッポなどが低価格かつ十分な機能を搭載したプロダクトを投入し、サムスン電子からシェアを奪っている。シェア低下などからサムスン電子は中国にあった最後のスマホ工場を閉鎖した。その上で、同社はスマホ生産をインドネシア、インド、ベトナムに移管し、コストを引き下げたいという狙いがある。

 ただ、この取り組みが本当に同社スマホの競争力向上につながるかはわからない。アジアを中心とする新興国のスマホ市場全体でも、中華スマホメーカーのシェアが拡大しているからだ。

正念場迎える
サムスン電子の経営戦略

 サムスン電子の経営戦略にもやや不安がある。同社は、“逆張り”の経営戦略によって成長を実現してきた。それは同社の設備投資の過去の実績を振り返るとよくわかる。

 2014年、サムスン電子は当時の保守派政権のバックアップも得つつ、ソウル郊外に大規模なメモリ工場を建設した。この工場の生産能力は、当時の世界最大レベルだった。

 当時、世界経済は減速傾向にあった。2014年の年央には原油価格が急落した。米国では景気回復を支えてきたシェールガス開発が冷え込んだ。米国の生産活動は停滞し、世界経済全体で生産能力の調整圧力が高まった。多くの企業が設備投資への慎重姿勢を強めた。一方、サムスン電子は将来の市況反転を見据え、メモリ需要が回復する局面で一気に世界のシェアを高めることを狙った。