緊急時の対策の遅れは
日本の体質か?

 自然災害ではないが、国民の救済が待たれる緊急時の初動対応の遅れが、かつて日本で物議を醸したことがある。

 今から30年以上も前にさかのぼるが、日本政府の対応が問われた有名な事件がある。1985年3月、イラン・イラク戦争に巻き込まれたテヘラン在住の日本人215名の救出に、日本からの救援機はついに飛ぶことはなく、トルコ航空機が窮状を救ったというものだ。

 のちの国会で「なぜ日本は救援機を出さなかったか」が議論されたが、安倍晋太郎外相(当時)は、「いつでも飛び出せるという形になっていたが、結局その必要がなかった」と述べ、トルコが特別機を出し、日航機の出動の必要がなかったのはむしろ日頃からの“外交成果”だとし、世間の批判をかわした。

 一方で、2011年初頭に勃発したリビア内戦では、在留する中国人を救出するために、中国政府は合計91機を飛ばした。当時、リビアには鉄道・通信・油田などの開発に携わる中国人が多数滞在していた。

 そのときの報道写真が映し出すのは、中国国旗を手にし、機内で安堵する中国人の姿だ。予め準備された国旗や横断幕からは、この救出劇が政治的な宣伝に使われていることが見て取れる。それでも、3万5860名を救ったという事実は残り、映画の題材にもなるような歴史のひとコマを刻むことになった。

 余談になるが、今年9月に、英国の大手老舗旅行代理店のトーマス・クック・グループが破産申請したが、このとき英国政府は133億円を拠出し、同社ツアー客として国外を旅行中の英国人15万人を数十のチャーター機で救済した。英国政府はバカンスを楽しむ海外旅行者さえも「国民救出」の対象にするのかと驚かされる。