タトゥーをした女性写真はイメージです Photo:PIXTA

 大詰めの「ラグビーワールドカップ2019」。各地で盛り上がりを見せている。

 場外で盛り上がったのが「タトゥー(入れ墨)」問題だ。日本では反社会的勢力の象徴とされるため、国際統括団体「ワールドラグビー」が「日本文化への配慮と尊重」を呼びかけた経緯がある。

 実際、サモアなどタトゥーを民族の誇りとして尊重する太平洋諸島の選手たちも、公共の場では長袖を着用するなどの配慮を示してくれた。心から感謝したい。

 それにしても素朴な疑問として、タトゥーは選手たちのパフォーマンスに影響しないのだろうか?

 ちょうど2年前、ドイツ・ケルン体育大学の教授が「タトゥーの染料が皮膚の発汗機能や体温調節機能を妨げ、数%はパフォーマンスが落ちる」とし、サッカー選手にタトゥーを入れないよう警告を発したことがある。

 一方、先日オーストラリアから報告された研究によれば、タトゥーの有無は、「運動中」の発汗機能に何ら影響しないという。

 本研究は、身体の片側に面積が11.4平方センチメートル以上のタトゥーを入れて2カ月以上過ぎた健康な成人22人(平均年齢25.1歳、男性14人)が対象。

 タトゥー側と非タトゥー側、および基準点としてタトゥーがない手首付近に汗を吸収するパッチを貼り、4×5分間の合計20分間エルゴメーターをこぐ。その後、パッチを回収し発汗量とナトリウム濃度を比較した。

 その結果、タトゥー部位と非タトゥー部位との平均発汗率には差がなく、汗に含まれるナトリウム濃度でも有意差は示されなかった。差がある場合も基準点の変動範囲内に収まっていた。下の皮膚の色が見えない「濃い」タトゥーでも同様だった。

 研究者は「タトゥーが運動中の発汗と体温調節機能に影響する事実はなく、特別に冷やす必要もない。タトゥーの影響は過剰に評価されていたようだ」としている。

 今後、条件を変えた追試は必要だろうが、連日各国選手の圧倒的なパフォーマンスを観ていると、素直に後者の研究結果に軍配を上げたい気持ちになる。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)