「どれどれ、あー、ひどいですね。ちょっとごめんなさいね」

 医師はピンセットを使い、皮膚をピッと摘み取ると、顕微鏡でのぞき込んだ。それから分厚い医学書をめくり、あるページを秀美さんに指し示しながら言った。

「これですね『掌蹠膿疱症』、難しい漢字ですが、『しょうせきのうほうしょう』と読みます。水虫と似てますが、あちらは白癬菌という菌が悪さをします。しかし、掌蹠膿疱症の場合は、菌がないのが特徴です。見た目は悪いですが、人にはうつらないので安心してください。

 飲み薬と塗り薬をお出ししますが、まあ、難しい病気なんですよ。原因がよく分かっていないので、治療法も確立されていません。お気の毒ですが、諦めてもらったほうがいいかなぁ。

 それから、人によっては、鎖骨や胸の中央(胸鎖肋関節症)やその他の関節が痛くなることがあるようです。そうなったらもううちでは手に負えませんから、大学病院か、専門外来を探して受診するようにしてください」

 質(たち)の悪い水虫ぐらいにしか考えていなかった秀美さんは、この言葉を聞いて、血の気が引いた。

(諦めろなんて、うそでしょ。何言ってるのこの人、ヤブ医者なんじゃない)

ネットで調べると
信頼性の低い情報があふれていた

 それから秀美さんは、ネットで調べまくった。

 近所の皮膚科医の言葉は本当のようで、検索上位には、通常登場してくるような病院、クリニック、医師によるサイトは出てこない。代わりに「すべての症状は歯に詰めた金属のせい」と断言するクリニック、西洋医学では治せない病気を得意とする漢方系の薬局や医院、覚えやすいが変わった名前の治療法の口コミ情報などがあふれかえっており、ところどころ、まともなクリニック、病院の情報が挟まっている。

(原因も治療法も確立されていないから、こんなことになるんだろうなぁ)