「高校中退が増えるかも」
奨学金召し上げを経験した母娘の思い

 福島市のミサトさん(仮名・40代)も、英語民間試験の導入には危機感を抱いている。ミサトさん自身の娘・アスカさん(仮名・20代)は、すでに高校を卒業している。しかし高校時代、貧困ゆえに学びの機会を奪われる辛い経験をした。

 数多くの困難の中で、シングルマザーとしてアスカさんを育ててきたミサトさんは、無理の蓄積で心身を病み、生活保護以外の選択肢がなくなった。アスカさんが小学6年生の頃である。生活保護ゆえの制約は数多いとはいえ、落ち着いた生活が送れるようになると、アスカさんは「建築家になりたい」という夢を抱いた。

 学業に打ち込み、成績を急伸させたアスカさんは、給付型奨学金と念願の高校への進学に成功した。ところが、その給付型進学金を福島市が“召し上げ(収入認定)“してしまったのである。筆者の言葉で当時の福島市の考え方を表現すると、「生活保護世帯の子の身の丈に合った高校生活を」ということだ。

 「誰の上にも、こんなことは二度と起こってほしくない」と望んだ母娘は、審査請求や行政訴訟に取り組み、訴訟で全面的に勝訴した。しかしアスカさんは、せっかくの努力の結果を奪われ、受験に向かってテンションが高まっていく学校の中で孤立気味になり、転学した。現在は転学先の高校も卒業し、療養しつつマイペースで、現在の夢の実現に近づこうとしている。もしも現在、アスカさんが高校2年生だったら、ミサトさんはどうするだろうか。

「最初から『大学は諦めてね』ということになるのではないかと思います。そんなお金、出せません。生活保護のもとで生活がギリギリなのに、教育にかけなくてはならないお金が、また増えるわけです。節約するといっても、限界があります。そこまでして、受験費用を捻出できるかというと……はっきり『無理』と言うしかありません」(ミサトさん)