いつまでも自分の歯で食事をしたい…誰しもそう考えるもの。しかし、歯の周辺組織が炎症を起こして、最悪の場合、歯を失ってしまう“歯周病”を発症すると、大切な歯を守るどころではない。特に中高年以降は、歯周病の有病率が格段にアップするという。歯周病を防ぎ、大切な歯を守る方法とは。(清談社 真島加代)

心筋梗塞や糖尿病も…
歯周病と関わりが深い疾患

歯周病のイメージ一度発症したら自然治癒することはなく、歯周病菌が血管に入り込めば心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすこともある。歯周病は恐ろしい病なのだ Photo:PIXTA

 歯周病は、歯と歯茎の間にある空洞・歯周ポケットの中で細菌が増殖して炎症を引き起こす疾患だ。

「歯周病の原因となるのは歯垢(プラーク)と呼ばれる細菌の塊です。歯垢の中にはむし歯菌や歯周病菌など1億以上の細菌がうようよしています。歯周ポケットの中は歯ブラシも届かないので、細菌が増殖していきます」

 そう話すのは、東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック院長の新谷悟氏。実は、40~50代の中高年が“歯を失う原因”の約50%が、歯周病によるものだという。

「歯周ポケットにたまった歯垢は毒素を出して、歯肉や歯根膜、歯を支える骨(歯槽骨)などの歯周組織を刺激します。その後1週間ほどで硬くなり、歯石という物質に変化。歯の表面についた歯石に、また新たな歯垢が付着して細菌が増え、歯周病を悪化させるのです」

 歯垢による炎症は、歯肉の腫れや出血を引き起こす。その後も放置を続けると、歯の土台となる歯槽骨をも溶かしてしまうため、歯を支えることができなくなり、抜歯せざるを得ない状況に追い込まれるという。

「歯の土手が溶けてしまうと、インプラントを入れることも難しくなります。骨を作る手術などが必要になるのです。入れ歯を装着するにしても、入れ歯を安定させる土手が痩せてしまうため、入れ歯が外れやすかったり咀嚼が難しくなったりと、とても使いにくくなってしまいます」

 歯周病は、ただ歯がなくなるだけでなく、その後の生活の質を下げかねない重篤な病なのだ。また、歯周病はさまざまな疾患と関わりが深いことが指摘されている。

「歯の清掃を怠ると食べ物が歯に付着し、歯垢をためる原因になります。糖尿病の方は高血糖状態が続くことにより、免疫防御反応が低下し、感染症にかかりやすくなっているので歯肉炎や歯周炎を発症しているケースが多く、歯周病は糖尿病の合併症のひとつといわれていますね。そのほか、歯周病菌が血管に入り込むと、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすこともあるので、命に関わる病でもあります」