最近では、日本と同じように残留基準以下のなら安全とされている米国で、自国産牛肉の安全性に疑問を抱く消費者が増えつつある。

 こうした消費者は安価な普通の牛肉を避けて「有機(オーガニック)牛肉」を買っており、その売り上げが急増している。有機牛肉になる牛は、合成農薬や化学肥料を使わない飼料で育てられ、もちろん肥育ホルモン剤も使っていない。

 外食業界でもホルモン剤使用牛肉を避ける店が増えており、「私たちは、成長剤やホルモン剤や抗生物質を一切使わず牛を育てている生産者からしか牛肉を買いません」と宣言し、売り上げを急増させている新興の高級ハンバーガー店も出ている。

 米国では、「グラス・フェッド(牧草飼育)牛肉」の需要も急増している。 グラス・フェッド牛は、普通の牛が高カロリーの穀物飼料を食べて育つのに対し、本来の牛の食べものである牧草を食べて育つ。脂肪分が少なく健康によいうえ、飼料のために大量の穀物を生産しなくて済むため環境への負荷も少ない。

 このため需要が急増しているが、米国内での生産が少なく、約8割は輸入ものだ。

 EU市場から締め出され、米国内の消費者にも見放されつつある米国産牛肉にとって、肥育ホルモン剤使用に無頓着な日本はきわめて重要な市場だ。

 ところが、オーストラリア産牛肉の関税はTPPですでに下がっている。 トランプ大統領は「ハンディを早くなくしてほしい」という牛肉生産者の要望に急いで応える必要があったわけだ。

 実際、米国牛肉の対日輸出量は今年3月から8月については7月を除いて5ヵ月が前年割れ(前年同月比78~95%、農畜産振興機構資料)だ。

 なおオーストラリアも肥育ホルモン剤の使用を認めているが、輸出用にホルモン剤不使用の牛肉も生産しているから、日本の消費者は「ホルモン剤不使用」と明示されたものを選べば、ホルモン牛肉は避けられる。

トウモロコシも「緊急輸入」
米国内の需要減退に“助け舟”

 一方、米国産トウモロコシ275万トンの緊急輸入は、8月末の日米首脳会談で突然、決まった。

 トランプ大統領は首脳会談後の共同記者会見で、「中国が約束を守らないせいで、我々の国にはトウモロコシが余っている。それを、安倍首相が代表する日本がすべて買ってくれることになった」と述べた。

 あたかも米中貿易協議で、中国政府が貿易不均衡改善の一環として表明していた“約束”の不履行を日本が肩代わりしたかのような言い方だった。

 ただ、この発言には誤りが含まれている。