近年、中国はトウモロコシをほぼ自給しており、米国からの輸出は年数十万トンにすぎない。米国でトウモロコシ相場が下落している一因は、国内需要の4割近くを占めるバイオ燃料(トウモロコシからつくるエタノール)向け需要の減退だ。

 地球温暖化対策として米国では、エタノールをガソリンに混ぜることが義務づけられているが、これは「製造業や消費者の負担を増す」などの理由で、トランプ支持の石油業界に不評だ。

 このためトランプ政権は今年8月、国内の31製油所に対しエタノールの混合義務を免除すると発表した。その結果、トウモロコシ価格はさらに下落し、やはりトランプ支持のトウモロコシ農家の猛反発を買った。

 トウモロコシとエタノールの最大の産地であるアイオワ州は、来年の大統領選の勝敗を左右する州の1つだ。

 こうしたトランプ大統領の“事情”をくんで、安倍首相がトウモロコシの緊急輸入という助け舟を出したのが実態だ。

 もっとも日本が緊急輸入する275万トンは、米国のトウモロコシ生産量の1%にも満たない。日本の緊急輸入の話が伝えられた後も、相場はほとんど動かなかった。

 農民票を無視できないトランプ政権は10月4日、ガソリンのエタノール含有量を来年から引き上げると発表した。これには石油業界が激しく反発している。

「害虫の発生」という理由だが
被害報告なく、使い道は不明

 トウモロコシの緊急輸入を決めた日本政府の説明もごまかしに近いものだ。

 菅義偉官房長官は8月27日の会見で「(日本国内でトウモロコシの)供給が不足する可能性があるから」と説明した。

 7月からツマジロクサヨトウという害虫が発生し、九州地方を中心にトウモロコシに被害が出ている、というのがその理由だ。

 しかし、害虫が発生しているのは事実だが、被害の報告は少なく、供給に大きな影響を与えるほどのものではない。

 そもそも国内産のトウモロコシは、成熟する前に実や葉がついたまま刈り取り、サイロで発酵させ、牧草などとともに牛に与える「粗飼料」用だ。畜産業者が自家消費用に年450万トンほど生産している。

 これに対し、主として米国から年に1100万トンほど輸入されるのは、トウモロコシの実で、これは「濃厚飼料」(配合飼料)に用いられる。