カジノ資本は、顧客を握っている。なじみの客を遊ばせる賭場を確保しなければならない。常連にとっては、金銭がらみの「個人の情報」を知る業者との関係は簡単に切れない。

 仮にマカオの営業権を失ったとき、マカオに代わる賭場が必要になる、と業界関係者はいう。そして、世界一の規模となったマカオの受け皿は日本しかないというのだ。

「マカオの営業権」と「日本進出」。微妙に絡む2つの課題を結ぶ接点でもアデルソン氏が登場する。

 調査報道メディアである米国の「プロパブリカ」は2018年10月、前年2月に行われた日米首脳会談で、「トランプ大統領は安倍首相に対し、自らの支持者であるアデルソン氏の名を挙げ、日本市場への参入を要請した」とする記事を掲載した。

 ラスベガス・サンズは、この記事を否定せず、記事にあった「ゲーミング業界は長い間、日本市場に参入する機会を求めていた。ゲーミング会社はそれを実行すべく多大な資金を費やしており、ラスベガス・サンズも例外ではない」というコメントを繰り返すにとどめた。

IR法検討時からロビー活動
横浜「誘致表明」にも陰

 日本でIR実施法が強行採決によって国会を通過したのは、2018年7月。世論と野党の抵抗で暗礁に乗り上げていたカジノ実現で陰に陽に展開されたのが、カジノ資本のロビー活動だ。

 日本では、外国人観光客を増やすなどが狙いのIRの目玉として、カジノ法制化の議論が始まり、2016年12月にIR推進法が成立。ギャンブル依存症対策の取り組みとともに、IR実施法の検討が始まった。

 アデルソン氏は2017年、大阪で知事・市長に面会した後、カジノ施設の面積規制を盛り込んだIR実施法草案を、「これではわれわれが望んでいたIRを実現できない」と批判した。

 面積に上限が設けられれば、IRの投資を50億ドル(約5500億円)以下に抑えざるを得ないとも語った。

 面積規制は、有識者会議の提言で盛り込まれたものだったが、翌年、国会に提出された法案からはバッサリ削られていた。

 カジノ解禁に二の足を踏んでいた横浜市が今年8月22日、「カジノ誘致」を表明した際も、まるで呼吸をあわせたかのようなアデルソン氏の素早い反応が話題になった。

 林市長が「カジノ誘致」を表明すると、アデルソン氏は同じ日のうちに「大阪は撤退。東京・横浜への投資が最善」との声明を出し関係者を驚かせた。