中国が「デジタル人民元」を発行する可能性を示唆している。そうなれば世界で初めてデジタル通貨を発行する国となり、ドルの圧倒的な優位が揺らいで、世界的な覇権争いに大きな影響を及ぼす可能性がある。(久留米大学商学部教授 塚崎公義)
中国が「デジタル人民元」発行の可能性
中国が、デジタル人民元の発行を準備している模様だという報道があった。その取引方法の基本原理はビットコインと似ているようだが、ビットコインのように価格が変動するものではなく、価値が人民元に連動するもののようである。
筆者はデジタル通貨(暗号資産と呼ぶらしい)について詳しくないが、「国内に限らず国際間でも安く簡単に送金ができる通貨である」ようなので 、その前提で今後の行方について考えていきたい。
中国政府がしっかりと管理して、通貨発行量の目標をしっかり守るとすれば、「紙幣がデジタルに置き換わっただけ」になろうが、その利便性ゆえに大きな影響が生じるかもしれない。
自国通貨より人民元を選ぶ
途上国の人は少なくないはず
先進国の人間からすれば、人民元より自国通貨を持ちたいし、国際的な取引に際しては人民元より米ドルを使いたいと考えるのは当然である。しかし、世界を見渡すと、そういう国ばかりではないことがわかる。
まず現在、米国と関係が悪化している国は多い。そうした国の政府は、できれば米ドルより人民元を使いたいと考えている可能性がある。「米国の通貨など見たくもない」とまでは言わなくても、米ドルを利用することで、自国の資金の流れを米国に把握され、万が一の場合には米国内の資産を差し押さえられるリスクもあるからだ。