ようやくQR決済の波が日本に到来しているが、キャッシュレス先進国の中国ではすでに顔認証決済が導入済みだ。スマホのバッテリー残量を気にしなくてよいなどのメリットも聞かれるが、心配なのはプライバシーの問題。最近も米国では顔認証技術の使用を禁止する条例ができたばかりだ。日本も各銀行や企業が顔認証決済システムを開発中だが、その課題や展望などを中央大学国際情報学部教授の石井夏生利氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)
キャッシュレス先進国・中国では
顔認証決済は当たり前
現在、世界では現金を介しない、キャッシュレス化が進んでいる。日本でも昨年12月に行われた「PayPay」の「100億円あげちゃうキャンペーン」を皮切りに、QR決済戦国時代ともいうべきサービスの乱立が起きている。
世界に目を向けると、キャッシュレス化の先頭をひた走っているのは中国だ。中国では「ALIPAY(アリペイ)」(アリババ)と「WeChat Pay」(テンセント)がキャッシュレス決済の二大プラットフォームとなっており、都市部ではほぼすべての店舗やレンタルサイクル、レンタル傘などまでQR決済で行われる。
そんな中国で次世代決済として始まっているのが顔認証決済だ。顔認証技術は、監視カメラやATMなどで実用化はされていたが、決済での実用化は世界で初めて。2017年秋に中国杭州のケンタッキーフライドチキンで実用化されている。
「Smile to Pay」と称された、このサービスは「ALIPAY」のアリババグループが運営しているもの。事前にモバイル決済のできる「ALIPAY」アカウントに顔情報を登録すれば利用が可能になる。
中国では「ALIPAY」「WeChat Pay」が競って中国全土に顔認証決済システムの売り込み攻勢をかけている。そのため、現地では自動販売機や食料雑貨店でも顔認証決済が行えるという。
日本でもNECが顔認証決済の実証実験を行い、ファミリーマートとパナソニックが顔認証で入店、決済が可能な実験店舗を今年4月にオープンさせた。日本においても、顔認証決済の夜明けは近いといえよう。