それに対し、中国は「一帯一路」等々の掛け声のもと、仲間たちを囲い込もうとしている。将来的には、米ソ冷戦時代のように「米国陣営と中国陣営の間の取引はほとんどない」状況になる恐れもある。そこまで極端にはならなくても、そうした方向に向けて世界が少しずつ動いていく可能性は決して小さくない。

 そうした時に、米ドルが世界の基軸通貨として君臨しているようでは、中国陣営にとって誠に不都合である。そんな時にデジタル人民元が「中国陣営の基軸通貨」となれれば、中国にとって誠に好都合であろう。

 米国としては、米ドルが世界の基軸通貨から米国陣営の基軸通貨に格下げになるわけであるから、愉快なはずはない。

 このまま米中の冷戦が激化してゆくとすれば、デジタル人民元の出現は、両陣営の分断が進む大きな一歩となる可能性がある。

米中雪解けに過大な期待は禁物

 米中関係は、行きつ戻りつしながらも、確実に悪化の方向に進んでいくと考えておいた方が良さそうだ。

「トランプ大統領が選挙で負ければ、米中は仲良くなれる」という考えは持ちにくい。米国議会は、民主党も共和党も中国たたきに傾いていて、中国にとって不都合な法律が次々と超党派で成立しているわけで、仮に民主党政権になってもこの流れは変わらないと考えておいた方がいい。

 中国が覇権を目指す姿勢を改めて、鄧小平の「韜光養晦」路線(才能を隠して内に力を蓄えるという方針)に戻る可能性は皆無ではないが、これも過大な期待は禁物であろう。仮に中国が表面的な姿勢を改めたとしても、米国がその真意を疑えば、中国を警戒する動きが止まるとは考えにくいからだ。

 そうした中でのデジタル人民元の出現は、上記のように米中分断を促進しかねない。筆者の杞憂であることを祈りながら、今後の推移に注目することとしたい。