近づけば刺さり、離れれば冷える――人との距離感に疲れていませんか? お互いに依存することのない、心地いい距離感はどうすれば見出せるのでしょうか。
IVEチャン・ウォニョン氏や俳優ハ・ソクジン氏の愛読書と話題となり、韓国で262刷、60万部を超え、「哲学ブーム」の火付け役となった書籍『求めない練習 絶望の哲学者ショーペンハウアーの幸福論』をもとに解説します。

何度も集まっては離れることを繰り返したハリネズミは、お互いに最小限の距離をとることが最高の手段だということを発見した。

距離は人間関係に必要不可欠

何度も集まっては離れることを繰り返したハリネズミは、
お互いに最小限の距離をとることが最高の手段だということを発見した。

――『求めない練習 絶望の哲学者ショーペンハウアーの幸福論』より

人はひとりでいることを好みながら、誰かと過ごす時間も楽しむ。

孤独と社交は対立ではなく、同じ硬貨の表と裏である。

ショーペンハウアーが強調したのは、まず自分の足で立つ力だ。

他人から独立する術を知ってこそ、関係は選べるようになる。

それでも私たちは承認や愛情を求め、つい寄りかかりすぎてしまう。

そこで役に立つのが「ハリネズミの寓話」である。

寒い日に身を寄せれば温かいが、近づきすぎればトゲが刺さる。

離れれば痛みは減るが、今度は寒さに耐えられない。

この往復の末に見つかるのが、傷つけずに温め合える最小限の距離だ。

距離は拒絶ではなく、長く一緒にいるための温度管理である。

具体的には、境界を短く明るく伝えることが役に立つ。

「今日はここまで」「その件は来週に」――弁解を足さず要点だけ置く。

相手の沈黙も、すぐ不安や敵意に結びつけない。

沈黙は多くの場合、呼吸であり、整えるための間である。

期待は小さく具体的に共有する。

「今は話を聞いてほしい」「助言は明日でいい」と言えれば、余計な衝突は減る。

比べるのは他人の関係ではなく、昨日の私たちの関係にする。

昨日より少し楽に話せたかで測れば、進み方は落ち着く。

寄りかからずに寄り添うために、私たちは適度な距離を学ぶ。

その間合いがあるからこそ、温もりは長持ちし、関係は壊れにくくなるのだ。

(本記事は『求めない練習 絶望の哲学者ショーペンハウアーの幸福論』をもとに作成しました)