望月理恵子さん管理栄養士の望月理恵子さん

大晦日(みそか)の夜にいただく年越しそば。その由来は、そばの麺が細く長いことから長寿を願ったものであるという説や、そばが切れやすいことから今年の厄災を切り捨てるためなどさまざま。いずれにしても新年への希望が込められている。そして栄養学的にもそばは健康効果が高い食材だが、夜に食べる上では注意点もあるという。年越しそばの効果を最大化する食べ方を取材した。(ジャーナリスト 笹井恵里子、監修/東邦大学名誉教授 東丸貴信)

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そばは血糖値の急上昇を防ぎ
動脈硬化や脳卒中を予防

 今夏に配信した記事「最強の主食ベスト1」でも記したように、そばは主食の中でも健康効果が高い食材だ。その理由の一つが、GI値(食後血糖値の上昇を示す指標)が低いこと。

 東邦大学名誉教授で循環器専門の東丸貴信医師がこう説明する。

「白米、うどん、そば、食パンの中で、そばはGI値が最も低く、またGL値(一食分の量を踏まえた炭水化物の量)も低いので食後の血糖値上昇を抑えられます。血糖値が急上昇すると、エネルギーに使われずにあまった糖が中性脂肪に変わります。中性脂肪は皮下に蓄えられ太りますから、これを防ぐそばはメタボの人にも好ましい食品といえますね」

「また、そばは抗炎症や抗酸化作用のあるルチンという成分を含んでおり、毛細血管を強くしたり、動脈硬化や血栓症を抑えます。このようにしてそばは、脳卒中や心血管病を予防できるのです」

そばを夜に食べるのは
「理にかなっている」

 また、年越しそばは「夜に食べる」ものだが、早稲田大学名誉教授の柴田重信氏(東京科学大学特別研究員、愛国学園短期大学特任教授)によると、「理にかなっている」という。

 健康を維持するポイントは体内時計を「規則正しく刻ませる」こと。体内時計は、体のそれぞれの生理機能が最も働くべき時刻にピークを迎えるように整えてくれている。

 そのリズムを守り、時間を考えて行動することが若々しく健康に生きる最大の秘訣(ひけつ)といっていい。体内時計の視点から考えた栄養学を「時間栄養学」といい、この分野を牽引(けんいん)してきた柴田氏が続けて言う。