「誰かが犠牲となっているのでは?」
潜むトヨタの悩ましい事実

 ただ、絶好調だからこそ浴びせられる疑問の声もある。

 「素晴らしい決算だ。でも、誰かが犠牲となっているのではないか」。決算説明会で出た質問が、まさに取引先の声を代弁している。

 無理もない。トヨタグループの筆頭格である1次下請け(ティア1)のデンソーやアイシン精機ですら、この上半期は減収減益に陥っているのだ。減益の要因には、中国事業の減速などに加えて、「CASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング&サービス、電動化の4つの技術トレンド)と呼ばれる新領域での開発コストが上昇し、疲弊してしまっていることがあげられる。

 「100年に1度」の大変革期だから致し方ない――。自動車産業のメーカー幹部は声を揃える。だが今、自動車業界では、トヨタなど完成車メーカーによる新次元の“ケイレツ搾取”が行われつつある。

 クルマをハードウエアとしてではなく、移動のためのモビリティという“サービス業態”として捉えるMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)なる概念が登場して以降、クルマに関する価値観は一変した。消費者にいかなるサービスを提供できるかが問題になり、近い将来には、もはやハードウエアとしてのクルマには重きが置かれない時代がやってくる。

 そこでトヨタなど完成車メーカーは、未来のモビリティ業界でもプラットフォーマーとして君臨し続けるために、どこにコア・コンピタンス設定するのか、ビジネスの「土俵」を変える覚悟で生き残りを模索している。

 誤解を恐れずに言えば、それは、クルマの商品価値の差別化に繋がらない「ハードウエア」部門の開発や製造を(完成車メーカーから)下請けへ譲りわたすことだ。実際に、トヨタは、半導体事業やディーゼル事業をデンソーへ移管している。