65歳以上の高齢者人口、2019年9月15日現在推計

65歳以上の高齢者人口、2019年9月15日現在推計出所:総務省統計局

 今年の敬老の日に合わせた総務省統計局の発表によると、日本の高齢者(65歳以上)の人口が3588万人と過去最多になった。そのうち100歳以上が実に7万人を超え、いまや100歳超のご長寿も珍しくない。総人口に占める高齢者の割合も日本は28.4%と世界で最も高く、2番目のイタリアを5ポイント以上引き離している。

 このような長寿社会が実現したことは大変喜ばしい。しかし、人間は永遠に生き続けられるわけではない。高齢者が増えることは死亡者も増えることを意味する。人口動態統計によると、現在年間で約136万人が亡くなっている。死亡者は今後も増え続け、ピークとなる2040年には年間160万人以上が死亡する見込みだ。

 日本の高齢化社会は多死社会という新たな局面へ入りつつある。火葬場不足だけでなく、単身の高齢者が多いため亡くなった方の身寄りを探したり、財産を承継したりという手続きが煩雑で、新たな社会問題につながる可能性がある。

 身寄りを探すには住民票を頼りに本籍地から戸籍を取り寄せ、戸籍の附票を使って親族に連絡を取るしかない。しかも最近は番号案内(104番)への登録者が少ないため、名前と住所が分かっても電話番号が分からず、郵便しか手段がない。探し当てても引き取りを拒否されることもあるという。

 さらに、財産が把握されていないと遺産の承継もままならない。所有者不明の空き家や土地が周囲へ悪影響を及ぼし、金融機関の口座は休眠状態となり、多くの資産が死蔵されたままとなってしまう。

 韓国では高齢化が急速に進み、50年には日本を抜くという。しかし、韓国では家族関係登録制度で親族の関係が管理され、安心継承ワンストップサービスでは住民登録番号で金融資産、土地・自動車などの所有状況が照会可能だ。

 わが国では自治体が支援事業を行うなど努力しているが、自治体に押し付けるだけでは根本的な解決はできない。認知症や高齢者財産管理の在り方、韓国を参考にしたデータ活用なども含め、あらゆる面から知恵を出し、多死社会を支える仕組みを構築すべきだ。

(富士通総研 経済研究所 主席研究員 榎並利博)