さらに、製造ラインでの3交代制も効率化できるのではないか、という発想も生まれた。

 16時から23時までの夕方シフトの業務には、前後の昼間シフトと夜間シフトに移管可能なものがあった。それを動かせば、夕方シフトをほぼ「監視業務」のみにできることがわかった。

 監視業務は、生産ラインに異常が発生したときだけ対応できるようにすれば、無人化も可能だ。したがって工場業務は生産力を落とさずに、昼間と夜間の2交代制で行えるようになった。

「できない」という思い込みを捨てて、どうすればできるかを「ゼロベース」で考える発想の切り替えが、24時間操業を維持したままでの工場業務の「時短」を可能にしたのだ。

 現在、味の素では、西井社長の「残業ゼロ改革」の成果が出始めている。まず、全グループ社員を対象に行った「働きがい」調査では、直近の結果で79%が「仕事への熱意を持っている」と回答したそうだ。

 また、改革で実現した「働きやすさ」は就職希望者にも伝わり、マイナビと日本経済新聞社が共同実施した「2020年卒大学生就職企業人気ランキング」で、味の素は理系総合2位、文系総合6位につけている。とくに文系は、前年の34位からのジャンプアップだ。

 さらに同社では、改革により「定時終業を前提としたグローバル基準の働き方」へのシフトが進んでいる。そのおかげで、米国、ポーランド、タイなどの現地法人で採用した優秀な社員を、一時的に東京本社で働かせて経営理念や戦略を学んでもらうという取り組みも可能になった。

 味の素は「残業ゼロ改革」を通じて、労働生産性が高く、国内外から優秀な人材が集まり、その多くが働きがいを感じて働ける会社に確実に生まれ変わりつつある。

 本書を参考に、できないという思い込みは捨てて「ゼロベース」の発想で、「残業ゼロ改革」を検討してみてはいかがだろうか。

(文/情報工場シニアエディター 浅羽登志也)

情報工場
味の素が「労働時間1カ月分削減」に成功した、働き方改革の発想とは
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