「目黒」の「若手」で差別化

 税理士法人東京タックスウェイズの代表を勤める税理士、後藤勇輝さんは営業地域をあえて東京都目黒区に特化しています。

 大学卒業後商社マンだった後藤さんが税理士になったのは30歳を過ぎて間もなく。義父の税理士事務所の従前からの顧客を引き継がれたのですが、間をおかずにやはり後継者を探していた目黒区の税理士事務所から合併話が持ち込まれました。そこで後藤さんは新たに税理士法人を設立し、両方の顧客を引き継ぎました。2007年のことです。

 ところが翌年にリーマンショックが起こり、経営者の高齢化が進んでいた顧客のなかには廃業や縮小をする企業が出ました。また契約料の値下げを要望されることも少なくなかったといいます。

「これではいけない」と後藤さんは新規顧客開拓に立ち上がります。その時考えたことは「税理士もこれからは競争の時代だ。士業としてより自分らしい提案ができなければいけない。お客様は節税を望むかもしれないが節税に特効薬はない。払うべき税を払い、経営内容をよくして企業の体力をつけていくことが大事だ。それにはこれから伸びる若い企業を応援しよう」というものでした。  

 顧客の事業が成長すれば結果として長いお付き合いができるという、長期的展望を持つことにしたのです。

 そして立てたプランが「目黒に特化」でした。士業は地域に密着したサービスですから範囲を絞ることは重要です。東京都23区の中でも目黒区は高級住宅地ですが、電車やクルマで渋谷や恵比寿へ5分10分という場所柄、IT関連やデザイン事務所などクリエイティブな企業がオフィスを構える地域でもあります。後藤さんが求める若い企業人も多いでしょう。

「目黒は私の求める顧客層のイメージに重なっていた」と後藤さんはいいます。自分の年齢や感覚に近い人を顧客にすることは、好きな分野に特化するのと同じで、より自分の個性を発揮することができます。起業や事業承継をした若手経営者に共感する目黒の若手税理士という後藤さんのパーソナルブランディングの要素が1つ固まりました。目黒という象徴的なブランドを得たことで地域と個性が結び付き、今後、隣接する渋谷区、港区、品川区、世田谷区などへ商圏が自然に広がることでしょう。

「目黒・若手・相続」をキーワードにして
インターネットでアピール

 税理士事務所としてコンセプトを明確に立てた後藤さんは、ホームページを開設し、ブログも書き始めました。そして、弊社の運営するマイベストプロにも登録をしました。マイベストプロは、大手新聞社の信用がベースになっていたこと、そして地域別にさまざまな職種の人が集まっていたことが登録の決め手になったということです。