自己愛過剰人間の
著しく偏った認知構造

 自分がかわいいという気持ちが強すぎる「自己愛過剰人間」は、見苦しいほどに人の手柄を横取りしたり、人に責任をなすりつけたりする。だが、それを意識したら自尊心を保てない。

 そこで、みっともないと思ったり気まずくなったりしないで済むように、認知システムが自己防衛的にゆがんでいるのである。それゆえに、本人はまったく悪びれもせずに涼しい顔をしていられるのだ。

 先述の手柄を盗む同僚の事例で言えば、Cさんのアイデアだということは認知システムに取り込まれず、本人の中では、Cさんと一緒に話しているときに出てきたアイデアだというような認知になっている。

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 そこに利己的帰属がさらに働いて、「一緒に話していた自分が関与する形で生み出されたアイデアだ」といった認知になる。たとえそうであっても共同の産物なわけだが、ここにまた利己的帰属が働いて、自分の貢献の方を過大視する。

 本人の心の中では、このように事実が大きくゆがめられているため、悪びれることもなく、平気で人の手柄を奪うことができるのである。

 それゆえ、このようなタイプとかかわる際は、「なんでそんなえげつないことを平気でできるんだ」「あり得ない」などとイライラしても心のエネルギーを消耗するだけだ。そういうことが平気でできる人間なのだということを踏まえて、用心深くつきあうしかない。

 相手が上司の場合は、意見やアイデアを出し惜しみするわけにもいかないだろうし、書類作成で手を抜くこともできないだろう。しかし、だれもが同じような目に遭うわけだから、そのうち評判は広まっていくものである。

 とにかく、人の手柄を平気で横取りする人とつきあう際には、こうした認知構造のゆがみがあることを念頭に置き、あまり考えすぎて消耗しないようにしたい。相手の心理メカニズムがわかれば、ストレスの度合いも減るはずだ。