それでも彼らは、「デモで選挙制度は変えられなかったが、将来を自分たちで決めたいなら若者の政党をつくるべきだ」と訴えた。彼らは「活動家」から「政治家」に進化しようとした(第141回)。

 そして、16年9月4日に行われた香港立法会選挙で、民主派の若者らが6議席を獲得した。彼らを含む「反中国派」全体で30議席を得て、法案の否決が可能になる立法会定数70議席の3分の1(24議席)以上を占める画期的な勝利となった。

 しかしその後、彼らは中国を侮辱する言動を行ったとして、議員資格を取り消されてしまった。アグネスさんは18年4月の香港立法会議員の補欠選挙に、弱冠21歳の現役女子大生として立候補しようとしたが、当局によって立候補を差し止められた。

 彼らの政治家になろうとする志は、香港政府とその背後にいた中国共産党によって、踏みにじられることになった。そして、この件に象徴される、中国共産党・香港政庁による民主派に対する一連の「弾圧」は、民主化運動の中心メンバーだけではなく、多くの若者を深い絶望に陥れ、「暴力」を肯定せざるを得ないところにまで追い込んだのだ。

 この背景を理解することなしに、自由と民主主義を生まれながらに謳歌してきた人が、シンプルに「暴力はいけない」と言うのは、浅はかすぎると断ぜざるを得ない。もちろん、筆者も「暴力」は肯定しない。しかし、香港の「暴力」については、民主派の若者にまったく責任はない。彼らを徹底的に追い詰めた中国共産党・香港政庁にこそ、「暴力」の全責任があると、最大級の非難をしておきたい。

香港政庁・中国共産党が
区議会選挙の実施を恐れた理由とは?

 香港区議会については、地域の法律や予算を決める強い権限は持っておらず、公共サービスや福祉といった地域の問題について政府に提言する諮問機関のような役割しかない。従って、今回の選挙の結果は、香港の情勢に大きな影響を与えないという人がいる。しかし、その見方は、正しいとはいえない。

 香港政庁・中国共産党は、今回の区議会選挙を延期できないか、ずっと模索していたとされる。デモ隊と警察の衝突の激化で、選挙の安全な実施が困難だからと報道されることが多かったが、そんな単純な理由ではない。