文大統領、米国防長官に
「日本の説得」を要請

 こうして米韓同盟の重要性を認識せざるを得ないなかで、韓国大統領府はスティルウェル米国務次官補の訪韓後、韓国外交部に対して日本外務省との間で事態収拾策を探るよう命じた。

 すぐに趙世暎第1外務次官が秋葉剛男外務事務次官と連絡を取り、連日のように電話で協議を始めた。11月中旬以降、趙氏は少なくとも2回以上、東京にも訪れ、膝詰めでの談判も行った。

 その結果、2人がまとめた案が、日韓両政府が22日夕刻に発表した「合意」で、(1)韓国はGSOMIAの破棄通告を停止する、(2)日韓は課長級による輸出管理規制措置を巡る協議を局長級に格上げする、(3)輸出措置の撤廃に向けたロードマップをまとめる、というものだった。

 ただ、韓国大統領府はこの時点でも、まだ「日本による輸出管理規制措置の撤回確約」という、より韓国に都合の良い解決策にこだわっていた。

 GSOMIA延長を重要視する米国を頼り、「米国が日本を説得してくれるかもしれない」という期待を捨てきれなかったからだ。

 11月15日、文大統領は 訪韓したエスパー米国防長官と会談。GSOMIA延長を力説するエスパー氏に対し、大統領は「安全保障で信頼できないとの理由で輸出管理を強化した日本と軍事情報の共有は難しい」との立場を説明したと、韓国大統領府は発表した。

 だが、この話には続きがあった。米韓関係筋によれば、文氏はエスパー氏に対して「我々だってGSOMIAの延長を望んでいる。だが、日本がまったく名分をくれないから、どうしようもない。我々だけでなく、日本を説得してほしい」と頼んだという。

 文氏は韓国外交部が報告した「ロードマップ案」について、「案を作るのは構わないが、実際に政策として採用するかどうかはわからない」とも話したという。

 11月18日から19日にかけ、韓国の外交安保政策の実質的統括者である金鉉宗国家安保室第2次長がワシントンを訪れた。

 米国に「日本が輸出規制措置の撤廃を確約しない限り、GSOMIAを延長できない」という韓国政府の方針に理解を求め、場合によっては「日本が言うことを聞かないので破棄するしかない」という結論への支持を求めると同時に、日本に対する説得を依頼するためだった。

 だが、金氏と面会したポッティンジャー米大統領副補佐官(国家安保担当)は、「GSOMIAは日韓関係とは別の問題だ。北東アジアの安全保障を維持するため、GSOMIAを維持してほしい」。改めて米国政府の強い姿勢を示した。

 とかく、トランプ米大統領の関心は駐韓米軍経費の削減といったカネの問題だけなので、ホワイトハウスの大統領スタッフらを説得すれば、GSOMIA延長にこだわる米国務省や米国防総省が騒いでも問題はない、という金氏らの計算は崩れた。