自己流の便秘治療で肛門麻痺になってしまった人もいる写真はイメージです Photo:PIXTA

便秘で悩む人は多い。しかし、重度の便秘の場合、「たかが、便秘」と思って自己流で治療すると、思わぬ悲劇を招くこともある。便秘症の名医、横浜市立大・肝胆膵消化器病学教室の中島淳主任教授に取材した。(医療ジャーナリスト 木原洋美)

自己流治療のやり過ぎで
肛門の感覚がなくなって

 例によって便秘症の名医、横浜市立大・肝胆膵消化器病学教室の中島淳主任教授に聞いた4回目の記事。今回は慢性便秘“からの”重篤な病気も確かに怖いが、「そもそも慢性便秘自体、相当怖い病気である」ということを中島主任教授は指摘する。

 中島教授が最初に教えてくれたのは、ある30代女性患者の症例だった。

「10代の頃から、ダイエットとリバウンドを10回以上も繰り返してきた患者さんでした。ダイエットをすると、ほぼ確実に便秘になります。もともとの便の原料が不足してしまうので、当然、便の総量が減少し、排便回数も減るわけですが、それ以上に問題なのは、大腸の動きを活発にさせる “自然の便秘薬”である胆汁酸の分泌量が減ってしまうことです。胆汁酸が不足すると、便が肛門からするっと出るのに必要な粘液の分泌も減り、ますます便秘が悪化します。

 さらにダイエットをする方の多くは、せっかく痩せたはいいけど、ひもじさに耐えきれず、ある日突然ドカ食いを始めてしまう方が多いですよね。結果ダイエット前よりもさらに太ってしまう上に、便秘は悪化の一途をたどってしまう。