趣の異なる複数の
エリアで楽しめる

台湾芸術祭から垣間見える、台湾人のアイデンティティの変化子供たちと撮影する蔡英文総統。開会式のテーマ「日光を浴びる」にちなみ、客家人の風習である干し柿づくりの様子を再現した2000以上の柿型クッションが並ぶ Photo by H.K.

 10月19日、総統府(国家元首の公邸)前で芸術祭の開幕式が盛大に行われた。開始直前、現任の蔡英文総統が登場し、会場を沸かせた。壇上には、行政院客家委員会のメンバーや、各エリアのキュレーター(企画担当者)陣の姿もあった。

 この芸術祭がユニークな点は、各エリアでキュレーターが異なることだ。芸術家の感性と各エリアの文化を、個性豊かなキュレーターたちが独自の視点で結びつける。

 それはエリアごとの特色となり、あたかもひとつの芸術祭の中に、趣の異なる複数の芸術祭が納まっているかのようだ。この芸術祭の構成はまさに、様々な文化や風土を包含する台湾そのものなのである。 

台湾芸術祭から垣間見える、台湾人のアイデンティティの変化景山健「自然と共生共有」。「割り箸」を三角錐の形に組んだものを積み上げてドーム状にしている。景山氏によると、日本の割り箸はもともと間伐材から作られていたもので、資源を有効に活用した自然との共生の形だったという Photo by H.K.

いくつかのエリアを紹介しよう。

 まずは、日本の「瀬戸内国際芸術祭」等に出展経験もある林舜龍(リン・シュンロン)氏がキュレーションする、桃園県の龍潭(ロンタン)エリアだ。自然をいかした作品が展示されており、今回の芸術祭以降も常設展示されるものも多い。