一口に台湾といっても…
民族も言語も複雑

 台湾は複合民族国家である。総人口約2358万人の内、約98%が「漢民族」、約2%が「原住民」とされる。しかしその内実は複雑だ。

 台湾にはもともと、原住民としてマレー・ポリネシア系の人々が暮らしていた。平地に「平埔(ピエポオ)族」が、山岳地帯に「高山(ガオシャン)族」が住んでいた。

 17世紀頃、対岸の中国、現在の福建省から「ピン族」が渡ってきた。このピン族の末裔が今の「福ロー(ホーロー/ローは人偏に老)族」であり、「漢民族」とされるカテゴリーの約75%を占める。彼らの話す言語が現在、「台湾語」として普及している。

台湾芸術祭から垣間見える、台湾人のアイデンティティの変化林舜龍と王昱翔「稲の蛹(さなぎ)」。客家人は山岳地帯に集落を築き、自然と共生しながら暮らしていた。そのため、芸術祭の作品も山深い場所に点在する 画像提供:ロマンチック台三線芸術祭

 同じ頃、中国の広東省からも多くの移住者がやってきた。彼らの多くは漢族から迫害を受けて山岳地帯に住んでいた。よそ者という意味で「客家(ハッカ)人」と呼ばれた。現在、客家人は、「漢民族」とされるカテゴリーの約13%を占める。

 福ロー族や客家人は、台湾土着の「本省人」と呼ばれ、戦後に中国大陸各地から渡ってきた人々は、「外省人」と呼ばれる。福ロー族も客家人も外省人も、「漢民族」というカテゴリーで一緒くたになっている。他方、「原住民」のカテゴリーには、政府が認定しているだけで16の部族があり、それぞれが独自の言語文化を持っている。

 現在使用されている、台湾の標準語である「北京語」、福ロー族の言語が元となっている「台湾語」、そして「客家語」や各部族の言語、それぞれまったく質の異なるものであり、相互に通じない。このように台湾は、民族も言語も非常に複雑なのである。