“顰蹙(ひんしゅく)”という
概念が若者世代に浸透?

 人々の公共のマナーも大きく変わった。それを感じたのが、上海ディズニーランドだ。2016年の開園から3年を経て、筆者は2度目の訪問を試みた。3年前は、割り込みのチャンスをうかがう人がいたり、だらしなくベンチで寝そべる人がいるなど、“興ざめシーン”がたびたびあった。

 しかし今回は、こうした「その場の雰囲気にふさわしくない行為や行動」をする入場者を当時ほど目にすることがなかった。むしろ、若い世代を中心に「マナーを大事にしている」ことが見て取れた。

上海ディズニーランド「他者への配慮」が十分にうかがえた上海ディズニーランド 

 修学旅行先にもなっているディズニーランドは、5~6人で集団行動をする中国の学生をよく見かける。長蛇の列で順番待ちをしている最中のことだった。筆者の前方に男女6人の学生が並んでいたのだが、うち3人が荷物を置き忘れたらしく、後方に落伍してしまうハプニングがあった。

 前方にいる友人らに早く追いつきたいともがくのだが、3人は途中でそれを諦めた。仲間のひとりが「周りの人に迷惑がかかるよ」と、“追い越し行為”を制したのである。

 1時間待ちの長蛇の列では、“割り込み”のみならず“追い越し”も顰蹙となることを敏感に察知したようだった。逆にそれを観ていた周囲の人は彼らに理解を示し、「大丈夫だから仲間たちのところに行きな」と、後方の3人の背中を押して仲間の元に送り出したのだった。

 誰もが自分のことしか考えなかった一昔前、前出の大内さんのように、「外出」は精神的疲労を伴った。けれども今は、こうした微笑ましいシーンすら目にすることが増えた。

 とはいえ、上海ディズニーランドについて言えば、まだまだ残念に思うこともあった。

 中国語で「演職員」とも訳されるキャストは、来園者を“ディズニーマジックにかけるため”の高いプロ意識が求められる。ここならではの非日常性を楽しんでもらうためには、キャストによる演出が欠かせない。

 しかし、「あくびをする」「ほおづえをつく」など、この仕事はもう飽きたといわんばかりのやる気のないキャストがあちこちで散見された。安全管理を怠ってはならない仕事でも、「意識はここにあらず」が見て取れて、少々不安になった。客をもてなし喜ばせようというホスピタリティに到達するには、まだまだ長い道のりがあるようだ。

 もちろん、頑張っているキャストもいた。健気にも、一生懸命手を振って客の気持ちを盛り上げようとしているのだが、多くの客はそれに反応しようともせず素通りしていく。“ディズニーマジック”にかけようとしても、なかなかそれにはかかってくれない…。キャスト業の虚しさの一端も垣間見えた。