
――WSJ日本版創刊10周年にあたり、2010年8月17日付の記事を再掲載します。
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若い読者にとっては信じ難いことかもしれない。ほんの20年前、米国の政界と学界は、日本を躍進する経済大国とみなしていた。ハーバード大学の学者、エズラ・ボーゲル氏の著書「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は広く読まれ、メディアは、日本は戦争で米国に敗北を喫したが経済では米国に勝利を収めた、と報じた。
中国の国内総生産(GDP)が日本を上回り、世界2位の経済大国となったとのニュースは、こうした見方を皮肉に変えた。この出来事は一世代前には想像すらできなかった。それでも、日本の1人当たりGDPと生活水準は中国を大きく引き離している。

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しかし、チャートが示しているように、両国の成長トレンドに開きがあるのは否定できない。1990年から2009年までの中国の年間成長率はほぼ10%だ。これに対し、日本は高度経済成長の後、成長率が2%を大きく下回る水準まで著しく低下した。一方は貧困から急速に抜け出した。もう一方が陥ったのは、よく言って繁栄を維持しながらのスタグネーションだ。
アジアにおける形勢逆転の理由と、これが持つ意味合いを考えたい。明らかな教訓は、国家の豊かさは生得権ではないということだ。国民の才能を解き放つ健全な経済政策を通じて国家は毎年、繁栄を重ねていく。