――筆者のグレッグ・イップはWSJ経済担当チーフコメンテーター
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筆者が2001年に米連邦準備制度理事会(FRB)の取材を担当し始めた際、ポール・ボルカー氏はFRB議長を退任してから随分たっていたが、それでもあらゆる場所で見かけた。同氏が何か話すたびにニュースになっていた。
窮地に陥ったさまざまな組織がトラブル解決人として同氏に助けを求めた。その高潔で明確な道徳観は非の打ち所がなかった。2008年には次期大統領に選出されたバラク・オバマ氏に経済再生諮問会議の議長に指名された。同氏の後を継いだ歴代FRB議長はそのインフレ退治の手腕に絶えず敬意を表した。
8日に死去するまで多くの尊敬を集めた同氏だが、現代の深刻なマクロ経済問題であるインフレや財政赤字、銀行救済については、後継者らは同氏をタカ派の時代遅れの人物とみなした。
2008年の金融危機時にFRBが米投資銀行ベア・スターンズの救済を画策した際、ボルカー氏はFRBが「その合法的な暗黙の影響力の極限」に足を踏み入れ、「長く根付いた中央銀行の一定の原則と慣習を超越した」として批判した。それでもFRBは踏みとどまることはなく、さらに大規模な救済に乗り出した。