『外資系で自分らしく働ける人に一番大切なこと』は著者の宮原伸生さんが、日本企業を飛び出し、ベネトンスポーツ、日本コカ・コーラ、LVMH(モエヘネシー・ディアジオ)、ケロッグ、GSK(グラクソ・スミスクライン)などで、もがきながら見つけた「新しい働き方」を紹介する本です。そのエッセンスをコンパクトに紹介します。

外資転職で一番大切なことPhoto: Adobe Stock

転職で最も大事な心構え

ベネトンスポーツから始まって、LVMHのモエヘネシー・ディアジオ(現在)、コカ・コーラ、ケロッグ、GSKと数年おきに会社を変わっていったわけですが、会社の数が増えるごとにレジュメ(経歴書)が良くなっていく、という印象を私は持っていました。

マッキンゼーを出て事業会社に入ったのはいいけれど、これからどうなるんだろうか、という気持ちがずっとありました。世の中がはっきり見渡せているわけでもない。そこで、ヘッドハンターに会ってみたり、本を読んだりしました。

ここにずっといるわけじゃない。いることが正しいわけでもない。では、自分に何ができるのか。ずっともがいていた、と言っていいと思います。

だから、ということもありますが、会社を変わるにあたっては、報酬についてはほとんど気にしていませんでした。大事にしていたのは、その会社の商品やブランドに関心があるかどうかでした。それが仕事のモチベーションに大きく関わるからです。

そしてLVMHに移ってからは、マーケティング・ディレクターではあったものの、営業企画も見ていたので、次第に会社経営に興味が向かうようになりました。ただ、どこまで行ってもマーケティング・ディレクターはマーケティング・ディレクターで、全部を見られるわけではありません。数字の責任は究極的にはありませんから、いずれは社長をやりたいと思うようになり、そのための模索をしていくようになりました。

そして43歳のとき、日本ケロッグの社長に就任しました。人や組織、自分がそれまでやったことのなかったサプライチェーンなど、いろいろなことを含めて会社経営は面白いなと思いました。

50歳でGSKの日本のコンシューマー向け事業のトップに就任した時、世界中のジェネラル・マネジャーを集めた会議がアイルランドでありました。このとき、当時のアンドリュー・ウィッティCEOがとても面白いことを言っていたのを覚えています。

「ジェネラル・マネジャーというのは、AorBじゃないんだ。A&B&C&Dなんだ。いろいろなことをやるから、ジェネラル・マネジャーなんだ。1つしかできないのは、シングル・マネジャーだ」

優先順位はありますが、社長はいろいろなことができないといけない。経営者を目指すなら、そういうキャリアを作っていかなければいけないということです。実際、人、サプライ、セールス、カスタマー、マーケティングなど、幅広くいろいろな機能を理解していなくてはいけないのが経営です。そして、そこにこそ面白さがあるのです。

転職について強く思うのは、「転職して1年目」の大切さです。もっと言えば、「半年間の勝負」です。この間、徹底的に勉強しなくてはいけないし、結果を出さないといけない。あまり時間はありません。アクセルを一気に踏み込まなければいけないのです。

転職してきたばかりだから、などという言い訳はまったく通用しません。むしろ反対に、ずっとここにいたかのような振る舞いをしなければいけません。ガッと結果を出し、みんなの信頼を得て、ようやくスタートを切れるのです。だから、最初の半年間はとにかく懸命に働く。外資転職の重要な心構えです。