一方、老妻には雨あられと年賀状が舞い込んでくる。「これは年に一度の生存確認。病気や孤独な人がいたら助けて励ますのが浮世の義理で、年寄りのセーフティーネットですから」とやめる気はさらさらない。「浮世の義理」を果たしにせっせと観劇やランチ会、ボランティアに出かけている。

 Aさんは孤高の人の寂寞感と妻へのねたましさを覚えながら、早すぎた終了宣言を後悔しているという。

断捨離したのは
ストレスではなく生身の人間

 体力に余裕があるうちに「出したい人、出したくない人」を見極めて人間関係を整理しようというのが「年賀状終活」の主旨らしい。取捨選択の方法は人それぞれだが、多くは作家のやましたひでこ氏が提唱する「断捨離」、「こんまり」こと片付けコンサルタントの近藤麻理恵氏が提唱する「こんまりメソッドの整理整頓」に準じていると思われる。

 いわゆる断捨離や整理整頓法では、1年使わなかったものはおそらく今後も使わないし、ときめかないものも負担になるので、納得して思い切って処分するのが原則である。

 この手法で「年賀状作成というストレス」を断捨離したら、捨てたのは年賀状交換でつながっていた「人間関係」のほうだった…というケースが少なくないのだ。

 Aさんもその一人…。

 家具でも衣服でもない、うかつにも「生身の人間」と断絶したのをAさんは気づかなかったのである。

 正月のごあいさつという「浮世の義理」を有効利用して、順調に老後のライフスタイルの拡張を図っているAさんの妻のほうがずっと人生巧者なのかもしれない。

SNS利用の省エネ年賀状が
主流になる予感

 定年退職をきっかけに賀状交換をやめるか縮小する人も多い。

 女性総合職のハシリで大企業の部長職を務めたBさんも在職中は年賀状の山と格闘したが、退職後に手にした年賀状が10通足らずで、自身の存在価値を否定された気分でショックを受けた。

 もう表面的な付き合いはゴメンとばかり、同級生や趣味の仲間、兄弟いとこらのLINEグループの間でのみ、メッセージで年賀のあいさつや近況報告をかわしている。作成ストレスゼロ、はがき不要、好きなだけ長文が書けるなど「省エネ年賀状」はいいことずくめだから、将来はきっとペーパーレス化するだろうとBさんは予想している。