1万人を超えるリーダーは、「同じこと」に悩んでいた。
本連載は、1万人を超えるリーダーから寄せられた「悩み」に対し、明確な答えを提示するものだ。
著者は、日本最高峰のビジネススクール「経営アカデミー」で18年以上の登壇実績を誇り、経営者や企業幹部を指導してきた浅井浩一氏。全国で年間100回以上の研修や講演を行い、コンサルタントとしても現場に入り込む
「離職率を抑え、メンタルを病む人をゼロにし、なおかつ目標を達成し続ける」ために、リーダーとともに考え、行動し、悩みの解決を図る。業種・業態を問わず、職場再建率は100%。これまで指導してきたリーダーの数は1万人を超える。近著に『1万人のリーダーが悩んでいること』がある。

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 【悩み】説教するのが苦手です。私自身、説教されるのが嫌なので「こんなことを言われたくないだろうな」という意識が働きます。どうすればいいのでしょうか?

 「説教できなければリーダーに向いていない」なんてことはありません。むしろ説教好きな人のほうが要注意です。

ある会社で起こった悲劇

 ある会社が私を講師に招き、日本各地の支店長を集めてリーダー研修を行うことになりました。冒頭、研修の意図を説明しようと壇上に立った重役は、前から2列目に座っている四国支店長を見た途端、烈火のごとく叱責し始めました。

「君は4ヵ月前に大きなミスをして私に叱られたはずなのに、先日また同じミスをしたね。何を考えているんだ。どの面を下げてこの場に来ているんだ」

 叱責は10分間続きました。その間、四国支店長はひと言も言葉を発することはありませんでした。

 重役が下がり、研修が始まります。しかし同僚の面前でこっぴどく叱責された四国支店長は研修どころではなく、黙ってうつむいたままです。

 私は彼の様子を気にかけながら研修を続けました。やがて休憩時間になり一息つくと、四国支店長は仲間の支店長たちに慰められながら、ぽつりぽつりと語り始めました。

「ミスを繰り返したのはたしかに悪い。でもうちの支店は人員を減らされて業務が増え、全員休日返上で働いているうえに毎日夜遅くまで残業が続き、ギリギリの状態だった。今日の研修で重役に会えるのを機に、現場の窮状を直接訴え、ミスを防ぐための根本的な手立てを考えてもらおうと思っていた。その矢先にあの剣幕で怒鳴られては、私はもう彼と話す気力がない。現場の窮状を訴えられず、部下に申し訳ない……」

 涙ながらに語る四国支店長の話を聞き、周りの支店長たちも同じく涙を流しました。そして彼らも語りました。「実はうちの支店も同じような状況なんだ。いつ、おまえのところと同じミスが出てもおかしくない……」

 重役の説教は、支店長たちのモチベーションを下げたどころの話ではなく、全国の支店で起きている、まだ重役が把握していない大問題を吸い上げるチャンスさえも潰してしまったのでした。