部下一人ひとりを尊重して、信頼関係を築く――。これが、部下を掌握する鉄則です。しかし、現実はきれいごとだけではうまくいきません。たとえば、「不健全な不満分子」。陰に陽に上司の足を引っ張る部下は黙らせなければなりません。争いを起こさず、「不満分子」を掌握する方法とは?

しかるべきときには「刀」を抜かなければ、
部下に舐められるだけ

「北風と太陽」の寓話があります。

 部下に対するときには、「太陽」のように振る舞うのが賢明です。仕事の出来不出来よりも、まずは部下一人ひとりの存在を尊重する。相手の個性を大切にしながら、もてる力を最大限に引き出す。失敗を咎めるよりも、失敗から多くのことを学ばせる。課の運営方針を批判する部下とも真摯に向きあう。そのような姿勢が、部下との信頼関係を築くうえでは重要です。

 しかし、現実はきれいごとだけではうまくいきません

 たとえば、不健全な不満分子。会社に対して斜に構えて、仕事に前向きに取り組もうとしない。最低限の仕事はするが、それ以上を求めると、あからさまに抵抗はしないものの面従腹背を決め込む。課長に対して距離をとるばかりか、陰では悪口を言っている──。このような部下には手を焼きます。

 もちろん、このような部下に対しても、まずは「太陽」戦略で向き合う必要があります。しかし、それでも仕事に対する姿勢に改善が見られなければ、課長としてしかるべき対処をとらなければなりません。

「正面の理、側面の情、背面の恐怖」
 これは、かつて金融機関の不良債権処理で辣腕を振るった弁護士・中坊公平さんが遺した言葉です。指示に従わない部下に対して、まず「理屈」で説得する。そして、従いたくない気持ちにも一定の理解を示すことで、「情」に訴える。それでも、従わないのならば、「わかっているな?」というわけです。

 もちろん、「恐怖」はできるだけ使わないほうがいい。権限を行使すれば、必ず、反感を買ったり、恨みを買うなどの反作用があります。
 そもそも、部下は常に上司の背後に、権限という「刀」がちらつくのを見ながら働いています。上司が軽い気持ちで残業を頼んだときにも、部下は「刀」の存在を意識しながら、受けるかどうかを判断しているのです。ですから、むしろ、普段は「刀」を隠すことに気を遣ったほうがいいでしょう。

 しかし、いざというときには「刀」を抜かなければなりません。しかるべきときには、「竹光」ではなく「真剣」であることを示さなければ、部下に舐められるだけです。そして、部下に舐められた瞬間に上司は仕事を進められなくなります