具体的には、経済システムの基本理念は競争政策に反映されるが、企業への国家支援に対するスタンスにEUの効率性重視の精神が窺われる。すなわち、経営困難に陥った企業に対する救済は、市場競争を歪めかねないとの観点から、①支援の規模および期間を厳格に限定し、②国による支援の「1回限り原則」を厳格に適用する、等を内容とするガイドラインをEUレベルで定め、加盟各国はこれに基本的に則る形で限定的な支援を行ってきたのである(河村小百合「経済・金融危機下の企業への国家支援と出口戦略」日本総研BER 2010年6月号)。

 こうした競争促進的な経済システムと、社会的保護・社会的統合の両立をめざす欧州社会モデルの実現のために、欧州委員会は「フレクシキュリティ」というコンセプトを打ち出した。これは「フレキシブル」と「セキュリティ」を融合した造語で、「緩い解雇規制」「手厚い失業保険」「充実した積極的労働政策」の融合で、高いパフォーマンスを実現してきたデンマークをモデルにしたものであった。こうして、欧州諸国は、北欧モデルを参考にEUが打ち出した理念のもとで、「市場主義2.0」の道を追求してきたのである。

ユーロ危機と
「市場主義2.0」の関係

 もっとも、欧州諸国は「市場主義2.0」への道を順調に歩んできたわけではなく、むしろ国によっては逆行する動きもみられた。現在、世界経済を揺るがしているユーロ危機は、欧州全体でみた「市場主義2.0」への取り組みの遅れ、バラつきの拡大のツケであるともいえる。

 ユーロ危機は、通貨・金融は統合される一方、経済・財政が統合されていないことの矛盾が露呈されたものである。逆にいえば、単一通貨を目指す以上、最終的には経済・財政を統合することは不可避である。リスボン戦略は、その統合すべき経済社会モデルを示したものであったが、ドイツをはじめとする北方諸国はその歩みを着実に進める一方、ギリシャなどの南方諸国では改革は遅々として進まなかった。