1万人を超えるリーダーは、「同じこと」に悩んでいた。
本連載は、1万人を超えるリーダーから寄せられた「悩み」に対し、明確な答えを提示するものだ。
著者は、日本最高峰のビジネススクール「経営アカデミー」で18年以上の登壇実績を誇り、経営者や企業幹部を指導してきた浅井浩一氏。全国で年間100回以上の研修や講演を行い、コンサルタントとしても現場に入り込む
「離職率を抑え、メンタルを病む人をゼロにし、なおかつ目標を達成し続ける」ために、リーダーとともに考え、行動し、悩みの解決を図る。業種・業態を問わず、職場再建率は100%。これまで指導してきたリーダーの数は1万人を超える。近著に『1万人のリーダーが悩んでいること』がある。
【悩み】部下にハラスメントと訴えられるのが怖くて何も言えません。
職場におけるさまざまなハラスメントに対する世間の目が厳しさを増すごとに、会社でも対策が強化されています。
だからといって、部下から「パワハラだ」と訴えられるのを必要以上に恐れ、静かに見放していては、リーダー失格と言わざるを得ません。
ただ、ハラスメントはどうしても、受け手の主観によるところが大きいので、「よかれと思って指導したのに、相手はパワハラだと受けとった。なぜか自分が悪者になってしまった」という話もよく耳にします。
「パワハラをしていませんか?」取り調べが始まった
ある保険会社の営業所長のもとへ、本社のコンプライアンス部門から一通の知らせが届きました。
「お聞きしたいことがあります。時間のとれる日を教えてください」
営業所長は何事かと思いながらも都合のよい日を教えると、当日にはコンプライアンス担当の社員が3人、営業所を訪れました。聞けば「あなたからパワハラを受けたという訴えがパート社員から届いています。事実確認をさせてください」と言います。
身に覚えのない営業所長は驚きました。しかしそこから、まるで営業所長を悪者と決めつけているかのような「取り調べ」が始まります。
「あなたは今までに、声を荒げて部下を叱責したことがありますか?」
「そのパート社員の仕事がルーズだったために叱責したことはありましたが、感情のコントロールを失って声を荒げたことはありません」
「本当に、過去に一度もありませんか?」……。
ひとりが次々に質問を繰り出し、ほかの2人はそのやりとりをパソコンに打ち込んで記録していきます。とてつもない恐怖体験だったと語ります。
その話を聞いた別の営業所長は、「クレーマー社員」を抱えたときの対処法を教えてくれました。
対処法とは、「事実に基づいた会話と行動を記録に残す」というもの。