懸念すべき
反政府デモのリスク
米イラン問題、米中問題、OPEC動向は20年の原油価格動向を占う上で重要なイベントであるが、これ以外にも懸念されるリスクは多数存在する。特に気になるのが、世界中で発生している反政府デモの動きである。
下の図表は年後半に発生した各国の反政府デモの発生状況であるが、中東・北アフリカを中心に拡大していることが分かる。
これらのデモが発生する背景には、景気減速に伴う生活環境の悪化、雇用環境の悪化や権力者の汚職をはじめとする腐敗に対する不満などがある。
象徴的なのは公共交通機関の賃上げが原因でデモが発生したチリ、パンの価格値上げがきっかけとなったアルジェリアである。いずれも生活に困窮したことがデモ発生の要因だ。これは10年12月にアルジェリアで起きた、露天商の焼身自殺がきっかけで広がった「ジャスミン革命」と、その後の「アラブの春」に状況が似ている。
原油価格が十分には高くない中で産油国の財政状況は厳しい状態が続いており、仮に食品価格が上昇した場合、アラブの春のような反政府行動の連鎖が広がるリスクは無視できない。中東情勢不安は供給途絶を通じて原油価格の上昇要因となる。
19年はたまたま穀物が豊作だったため直ちにそのような状況になるとはいわないが、20年はラニーニャ現象の発生も予想され、すでに中国では豚コレラの影響で肉類の価格が高騰している。
仮に類似した状況が発生すれば、景気が底入れを試すと考えられる4~6月、穀物の収穫期に当たる秋口にかけて、そのリスクが高まる可能性があると予想される。
また、仮に米大統領選挙でトランプ大統領が敗北し、民主党政権が誕生した場合、中東への政策が変更され、国民の生活環境が悪化している中東地域での対立やテロが顕在化する可能性が高まることが予想される。米中の対立激化が最大のリスク、といいつつもその他の地政学的リスクも無視できない状況にある。特に市場への影響が大きい中東情勢は、今後も注視していく必要があるだろう。
(マーケット・リスク・アドバイザリー代表 新村直弘)




