現在、SNSで「いいね!」件数の廃止や、リツイート機能の見直しが検討されているという。すでにインスタでは、他人に「いいね!」件数が表示されなくなった。その理由や展望を『SNS変遷史「いいね!」でつながる社会のゆくえ』(イースト・プレス)の著者で、電通メディアイノベーションラボ主任研究員の天野彬氏に聞いた。(清談社 沼澤典史)
「いいね!」件数が非表示に
SNSに起きた変化とは?
昨年の秋頃から「インスタの『いいね!』件数が表示されない」という報告が相次いだ。これは、バグでもなんでもなく、れっきとした運営側による変更だ。投稿者は「いいね!」の件数が見られるが、それ以外のユーザーに件数は表示されないのである。
「インスタ映え」などの現象に見る「いいね!」獲得競争が激化したことも記憶に新しいが、なぜここにきて件数を非表示にしたのか。天野氏はまず、その理由にSNSの社会的な責任が大きくなっている点を挙げた。
「かつてのSNSは、社会の中の一部のユーザーが使っていたものでした。しかし現在、世界中で多くの人が利用し、すでに社会インフラとなっています。それに伴い、インスタに限らず、SNSの社会的責任が大きくなっているのです」
「いいね!」を増やすために命を懸ける人や、フェイクニュースの拡散、スマホ依存など、SNSが関係する問題が顕在化している。そういったことから世界的にSNSへの問題意識が醸成されており、運営側はこれまでのユーザーを「ハマらせる」方針を緩和せざるを得なくなったのだ。
「画面をタップするだけでいい最も手軽な報酬、承認装置、人気度可視化装置である『いいね!』は画期的な発明でした。しかし、それが人間の心に及ぼす影響や中毒性が強すぎた、と運営側は判断したのでしょう。SNSとの付き合い方と向き合うなかで、ひとまず『いいね!』の表示を止めてみようという結論に至ったのです」