「緘黙」ゆえに進路相談さえできない
希望しない地元高校へ進学することに

 中学に入ると、基本的には首で意思表示を続けていたものの、一言くらいは話すことができるようになった。

 また、野球部に入部。苦労しながらも、練習中や試合中の応援も声を出してできるようになった。

 その一方で、体が硬直してしまう場面が増加。休み時間になると、机から動けなくなり、それまで普通にできたスポーツも、動きが鈍くなった。

 そういえば、筆者も中学か高校くらいの頃から、皆に注目されるような場面になると、体の硬直を自覚するようになったことを思い出す。しかし、それまでは運動も好きだったし、硬直するようなことはなかった。もしかすると、小学校の頃「緘黙」だった影響なのかなと、感じることがある。

 Gさんは、中学3年になり、進路を決めるとき、誰も自分のことを知らない遠くの高校へ行きたいと思っていた。

 ところが、学校の先生にも、両親にも、そのことを言うことができず、結局、地元の高校に進学したことをいまでも後悔しているという。

 高校進学後も、野球は続けた。学校では、何とか笑うことができるようになり、話も文章レベルのことも話せるようになっていく。

 しかし、声が小さかったり、先輩から話すことを強要されたり、からかわれたりして、学校に通えなくなった。

 仕事を辞めたGさんは今も、家事を手伝うくらいで、ほぼ家にいる状態だという。

「緘黙」のことをインターネットで検索して知ったのは、10年くらい前のこと。それまでは「自分だけなのかな」と思っていた。しかし今は、こう考えるようになっている。

「これまでは、自分の心の中だけで片付けてしまって、周りには言えなかった。自分以外にもいることを知って、少し気持ちが楽になった。緘黙でひきこもっている方の話を聞いてみたいです」

 高校を辞めてからは、家でも話をしづらくなった。

 自分でも何とかしたいと思って、「かんもくの会」に入ったのは、つい最近のことだ。

「今、苦しんでいる子どもたちのために、教育関係者には、緘黙のことを理解してほしいと思っています」

 Gさんは、そう期待している。