【実話】たった二言でキーマンを落とした支店長

 ある製薬会社の営業マンが支店長を連れ、ドラッグストアの地域責任者へプレゼンに出向きました。営業マンは自社商品の特徴を一生懸命説明しましたが、相手の地域責任者はまったく関心を示しません。何を話しても生返事で、「早くこの時間が終わらないかなぁ」という気持ちが透けて見えます。

 そこで支店長が助け船を出しました。「今日はご挨拶とともに、御社に学びに参りました。御社が大切にしていることをぜひ聞かせてください」と切り出し、相手の話を聞く側に回ったのです。

 責任者の表情は一変。そこから2時間、話し続けました。話が終わると支店長は「今日は大変勉強になりました。御社が大切にされていることを我々も大切にし、精いっぱい貢献いたします」と締めました。

 すると責任者のほうから、満面に笑みを浮かべながら握手を求めてきたのです。部下は、自分が一方的に説明していたときとのあまりの変わりように面食らいました。

 製薬会社の支店長と部下が帰った後、責任者は自分の部下に「今度のあの会社の支店長は大した人物だ」としきりにほめたといいます。

 支店長が話したことといえば、「今日はご挨拶とともに、御社に学びに参りました。御社が大切にしていることをぜひ聞かせてください」「今日は大変勉強になりました。御社が大切にされていることを我々も大切にし、精いっぱい貢献いたします」の二言だけだったのに、です。

 相手がこちらの話に興味を持っていないのなら、相手が最も興味のある「相手自身の話」を聞く。これで信頼関係を必ず深めることができます。

 あなたが「コミュニケーションをとりたくなる上司」を目指すなら、まずは「話したい」という欲を抑えることから始めてはどうでしょうか。