何か象徴的なモノや人にフォーカスを当てて、誰もがわかりやすいターゲットをメディア全体が暗黙の協働で作り上げる。先駆けはSNSである場合が多い。ネットで形成された世論のようなもの、みんなが「いいね」する素材で一定期間商売をする。そうした傾向がここでも顕著に表われている。

 ちなみに、区間新をマークした選手の中で一人だけ、10区の創価大・島津雄大選手だけは、ミズノの白い厚底を履いていた。これはミズノが試作しているカーボン入りのシューズではないかと見られている。ナイキ一強の様相を呈しているシューズ戦争だが、各社が急ピッチで対応している様子も垣間見える。

『厚底』が快走できた
大会前と当日の気象条件

 スポーツライターとして、関係者に取材してみると、もちろん厚底シューズの効果は認めながらも、他の要因があるとの指摘もあった。

「昨年の秋から暮れは温暖で気候が安定していました。12月に入ってもいまのところ暖冬で、練習がしやすく、箱根に向けた練習が順調にできたチームが大半だったのではないでしょうか。体調が悪ければ、ナイキの厚底シューズを履きこなすことも難しい。シューズを生かせる万全の調子でレースを迎えた選手が多かったことも忘れてはいけません」

 駅伝チームの監督経験者は、こう教えてくれた。確かにブレーキ(不調に陥り、大幅に遅れる選手)も少なく、多くの選手が生き生きとした表情で走る姿が印象に残る大会だった。

 また、当日の気象条件も例年になく安定していた。暑くも極端に寒くもなく、風も穏やかな区間が多かった。こうした条件が揃ったことも、厚底旋風の下支えになっていたのだろう。

 だが、こうした目に見えない要素は、メディアやSNSで指摘されないかぎり、うっかり見逃され、話題にならない場合も多い。

 どんな走者が『厚底』に向いているか?

 今大会、金栗四三杯(MVP)に選ばれたのは、“花の2区”で史上初めて1時間6分を切り、1時間5分57秒の区間新をマークした東洋大・相沢晃(4年)だ。大学ナンバーワンの期待に応える快走。卒業後は旭化成入りが決まっている日本長距離界の星。相沢もまた、足下にオレンジとライトグリーンの『ヴェイパーフライ ネクスト%』をまとっていた。