相沢晃選手と厚底シューズの相性について、ケニアのカプサイト・キャンプ(ケニア選手が集まる有名なトレーニングスポット)に滞在してケニア選手の身体や走りを研究した実績もある陸上関係者に聞くと、こんな答えが返ってきた。

「相沢選手は元々、爪先側で着地して、そのまま前に進むタイプのランナーですから、ヴェイパーフライがすごく合っているのだと思います。

 日本の長距離選手はほとんどが、『かかとで着地し、足裏全体でなめるように地面を転がし、最後は爪先で蹴って出る』という走り方を教えられています。ところが、アフリカの選手たちは、かかとを着かない短距離型の走りがほとんどです。ケニアに行ってみるとわかるのですが、彼らが子どものころから学校の行き帰りに走っている道は凸凹で、かかとを着いてスムーズに走る環境にないのです。だから自然に爪先で入って弾むように走るスタイルが身についているのです。

 日本選手がこの走り方を無理にやろうとすると、疲労が大きく、長い距離を走りきれません。ところが、カーボンプレートが内蔵されているナイキの厚底シューズは、この走り方をサポートしてくれるので、うまく使いこなせると相沢選手のような爪先走りが楽にできて記録が伸びるでしょう」

新しいテクノロジーで見えてくる
古い日本の美学への疑問

 かつて世界のマラソン界を席巻した瀬古利彦さん(日本陸連マラソン強化戦略プロジェクトリーダー)は、典型的なかかと着地のランナーだった。足下は薄底の、足袋にも近いシューズだった。一方で、当時、最大のライバルだった中山竹通さん(ソウル、バルセロナ、五輪二大会連続4位)は、まったく走りのタイプが違った。上記の関係者は、こう語る。

「中山さんは当時からかかとを着かない爪先走りを実践していた。指導者になってからも、接地時間が短い爪先走りを提唱していました。現役時代、もし中山竹通さんがヴェイパーフライを履いて走ったら、とんでもない記録を出したのではないでしょうか」