市場は、3日のソレイマニ司令官殺害の後、原油高、リスクオフ(投資においてリスクを嫌うこと)による株安に振れたものの、濃縮活動再開以上の報復にイランが踏み切ることはないと高をくくり、7日の時点では落ち着きを取り戻していた。しかし、イランは米国への報復に出た。

 だから、市場は大きく動揺した。原油価格の代表的指標である北海ブレントは8日の時間外取引で、一時1バレル=71.13ドルと4カ月ぶりの高値を付けた。リスクオフの流れが強まり、円の対ドルレートは上昇し、1ドル=107円台を付けた。円高も重なり、8日の日経平均株価は、一時前日比600円以上下落した。

 米国は、イランが報復行為に出た場合には、報復し返すことを宣言している。そして、イランは米国の同盟国の基地を含めたその報復攻撃可能性も示唆している。本稿執筆時点(8日午後)では米国に動きは見られないが、報復の連鎖になる可能性は小さくない。

 今後、事態がエスカレートし、本格的な軍事衝突となった場合、イラクにとどまらず、サウジアラビアにある米軍基地やイスラエルへの攻撃、ホルムズ海峡の閉鎖まで考慮に入れる必要があるだろう。

 そのとき、原油価格はどう動くのか。

 当面は、「昨年9月のサウジアラビアのアブカイク油田が攻撃された時点での高値、北海ブレントでいえば1バレル=75ドルがめどとなる」(新村直弘・マーケット・リスク・アドバイザリー代表)だろう。

 本格的な交戦状態となった場合、合理的なめどが立たず、コール(買う権利)オプションが積み上がっている80ドル、90ドルが次の壁となる公算が大きい。

 それは、節目の水準に達すれば、買う権利が行使される。節目の水準より上昇するかどうかの過程では、購入した投資家が利益確定の売りを出すため、上昇を抑えることになるからだ。その売りをこなして上昇すると、次の節目までは大きな売り物がなく、すんなりと上昇しやすい。