昨年末に全国各地で
開催された「大人食堂」とは
2020年が明けたばかりの1月2日、足立区で、産んだばかりの新生児を死なせた31歳の女性が逮捕された。1人暮らしだった女性は、パチンコ店や飲食店のアルバイトをかけ持ちしており、妊娠について相談する相手はおらず、病院を受診する費用もなかった。
女性は12月28日、自宅浴室で1人で赤ちゃんを出産した。自宅にいるときは赤ちゃんをケアしていたが、仕事中は自宅に放置せざるを得なかった。赤ちゃんは日ごとに衰弱し、1月1日、足かけ5日間の短い人生を終えた。
女性の抱えていた事情は不明だが、生まれてくる赤ちゃんと自分を守るために生活保護を利用することはできたはずだ。民間団体や自治体も、さまざまな支援を用意している。しかし、赤ちゃんが亡くなるまで、女性に救いの手が届くことはなかった。どうすれば、このような悲劇を減らせるのだろうか。たとえばこの年末年始、全国各地で開催された「大人食堂」に、可能性を見出すことはできるだろうか。
東京では、東京アンブレラ基金・つくろい東京ファンド・NPO法人POSSEが協働し、新宿区内で「年越し大人食堂」を開催した。開催日は12月31日と1月4日で、両日とも昼食と夕食が無料で提供された。
全国から提供された良質で新鮮な食材を用いて、料理研究家の枝元なほみ氏が腕をふるった。とはいえ、会場の手狭さは否めない。この点について、一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事の稲葉剛さんは、このように語る。
「12月31日は、場所の確保に苦労しました。結局、普段は料理教室などを行っている、キッチン付きの貸しスペースを借りました。もともと定員が20名少しで、そこに想定以上となる38人の方が来られました。何人の方が来訪するか予測できない『大人食堂』の性格上、致し方ないことではありますが、空間的なゆとりがなかったことは反省点です」(稲葉さん)
公営施設も貸し会議室も、年末年始は休業することが多い。年末年始も営業しているパーティールームは、不特定多数の人々が出入りする「大人食堂」の開催には難色を示すだろう。それでも、稲葉さんが屋内で「大人食堂」を開催することにこだわった理由は、女性に来てほしかったからだ。