ニッセイ基礎研究所によると、誰にも看取られず自宅で亡くなる孤独死は年間約3万人だと推計され、同研究所の調査を基にした菅野久美子氏の試算によると、日本では約1000万人が孤立状態にあるという。孤独死の実態や孤独死対策について、前回(「孤独死の8割は男性、日本で軽視される『孤独』の深刻度」)に続き、専門家の2人に語ってもらった。(清談社 福田晃広)

用を足したペットボトルの山で
想像を絶する腐臭

孤独死現場のイメージ写真
孤独死の現場で典型的なのが“ゴミ屋敷状態”である(写真はイメージです) Photo:PIXTA

岡本 孤独の行き着く先は最悪の場合、犯罪だったり、死であったりするわけですが、孤独死に関しては男性が多いイメージがあります。実際そうなんですかね。

菅野 断トツで多いです。孤独死の約8割は男性だといわれています。

岡本 「男性は人に頼っていけない。弱音を吐いていけない」といったマッチョな考え方がありますからね。世界共通の考え方かもしれないけど、特に日本では根強いです。

菅野 あと、よくあるのは経済的貧困と孤独死を結びつけて、イメージする人が多いんですね。確かにお金がなくて、夏場にエアコンがつけられなくて熱中症で亡くなるというケースもあります。しかし、必ずしも孤独死と貧困が結びつくかといったら、そうとも限らないんです。人とのつながりが希薄になる状況に置かれれば、どんな人でも起こりうる。

岡本 孤独になる人も同じで、経済的な問題と必ずしも結びつかないですね。

菅野 私が取材したなかでは、上場企業のエリート営業マンが30代で上司とそりが合わずに退職し、親や兄弟に仕事を辞めたことが言えず退職金だけで20年間もひきこもり、孤独死してしまった人がいました。なので、高齢者や貧困で苦しんでいる人だけでなく、誰でも陥ってしまう問題なんです。

岡本 やはり、孤独死までいってしまうと、家族との関係性もまったくないケースが多いんですか。

菅野 長い間連絡を取らなくなってしまうのはそれぞれ事情があるんですが、実は、連絡を取ろうと思えば取れるんです。たとえば、亡くなってから警察が親、兄弟、親族を探せば割と簡単につながりますから。でも、生前から疎遠だったり、故人に良い感情を抱いていないので遺体を引き取りたくないという親族も多い。助けを求めないのは、先ほど岡本さんがおっしゃったようにプライドの問題もあるかもしれません。

岡本 実際の孤独死の現場は、想像を絶するほど凄惨な状況ですか。

菅野 典型的なのは、部屋中がゴミで埋め尽くされている“ゴミ屋敷”状態です。トイレに行くのも面倒で肉体的、精神的に追い詰められて難しくなる。4リットルの焼酎のペットボトルに用を足していて、その数は数百本にも及んでいたという事例がありました。それはもう、ガスマスクがないととても耐えられない、すさまじい腐臭でした。でも、そんな部屋の壮絶さよりも、そうならざるを得ない、亡くなった方の「生きづらさ」を感じるのが一番つらいですね。

岡本 それは体験した人にしかわからない、まさに言葉にできない衝撃なんでしょうね。