そこでペロー氏がどうしたかというと、ベトナム戦争で活躍した特殊部隊の元軍人を傭兵として雇い、監獄を強襲して救出させています。これは『鷲の翼に乗って』というテレビ映画にもなったほどの有名なエピソードです。

 他国の政府機関を民間企業の経営者が傭兵を雇って襲撃するというのは明確な違法行為ですが、ペロー氏に言わせれば「社員の命よりも大切なものはない」ということです。目標を達成するためには国内法など二の次に考えるという、グローバル経営者の思想がよくわかる事例だと思います。

「ゆらぎ」を起こして
既成概念を打ち破る手法

 しかし、ゴーン氏はなぜ国内法を破ってまで、日本を脱出する必要があるのでしょうか。そこにはゴールを達成すること以外に、「ゆらぎを起こす」というもう1つの狙いが関係してきます。

 世の中には閉塞感があって、なかなか変化が起きないものですが、グローバル経営者はこの状況を突破するために、「周囲を驚かせて変化につなげる」という手法を好んでとります。

 GEの経営者だったジャック・ウェルチ氏が、創業事業の家電部門を売却して周囲を驚かせ、その後の変革を加速させたのがその一例です。ゴーン氏も日産のリバイバルプランの際に、「取引先の部品メーカーを半分に減らす!」と宣言することで調達部門に大きなゆらぎを起こし、改革の成功につなげました。

 日本人から見れば、日本の司法制度は強固で変わらないものに見えますが、ゴーン氏はそこに国際世論を注目させるという手法で対抗しようとしました。だからこそのド派手な海外脱出劇だったと考えれば、このやり方は極めてグローバル経営者的な手法だと思えるのです。

 実は、こういった「ゆらぎ作戦」はグローバル経営者の得意技の1つです。各国の制度はまちまちで、不合理な制約が多いものです。そのため、国際世論を味方につけることで各国に制度改革を促すやり方を、グローバル経営者は多用します。