このようなグローバル経営者に必要な資質を、インテルの創業者、アンドルー・グローブ氏は「経営者はパラノイア(偏執狂)であるべきだ」と形容しました。できないと思うのではなく、それにひたすらこだわって、できるまで続けることが必要なのです。

我々から見ると異常な事態も
ゴーン氏にとってはそうではない

 そうした観点で私たちが理解しておくべきことは、ゴーン氏が徹底的にこだわる目的、つまり彼のゴールはいったい何なのかということです。

 晴れて自由の身になることが目的だとしたら、レバノン国内で静かに余生を送るはずですが、それでゴーン氏が満足できるのかどうか。この点には疑問が残ります。

 どうせならもっと自由の身になって、世界中で日本の司法制度の人権無視ぶりを喧伝することができる立場を手にいれるところまで徹底してやろうとするのが、グローバル経営者の価値観というものです。レバノンとフランスを行ったり来たりするだけで残りの人生が終わる程度の自由で、満足できるわけはないでしょう。

 だとしたら、冒頭で紹介した小説の中で私が設定した「レバノンの外交官特権を手に入れたゴーン氏が、世界を自由に飛び回る」というシナリオも、ゴーン氏にとってはそれほど突飛な発想ではないのかもしれません。私たちから見れば「異常な事態」も、グローバル経営者の視座で見れば「オプションの1つ」に過ぎないのです。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)