もち米の麹と黒ゴマ餡入りの白玉団子でつくられたこの「甜品」(スイーツ)は、漂う甘酒の香りと酒粕から来る控えめな甘さが特徴だ。金木犀の花を少し撒いて出されると、ダイエットの意志が強い女性でもすぐに抵抗力を失ってしまう。上品な中国南方系のスイーツとして、日本でも広く愛されている。

 今回の原稿を書くために、深夜上海のホテルでネットを調べたら、「日本で経済ジャーナリスト・作家として活躍されている莫邦富(上海人)氏も在外中国人が懐かしく思う故郷の味の1つとして酒醸圓子を挙げていた」といった内容のブログを見つけた。確かに私は、そのように発言している。酒醸圓子を味わおうという名目でパーティーを催したこともある。

 若い頃に農村に送り込まれた経験を持つ私のグルメ志向と言えば、間違いなくB級グルメだ。伊勢海老やアワビなどの高級食材を使う高級レストランよりも、街角や路地裏にある目立たない庶民系レストランの「家常菜」(家庭料理)に親近感を覚える。ただ、味には妥協しない。食材はポピュラーであっても、美味しなくてはいけない。

中華料理のB級グルメは
中国への理解をより深める

 こうした中華料理のB級グルメを、私は結構紹介している。たとえば、中国風のネギ入りおやきで、上海のB級グルメの代表格とも言える存在である葱油餅(ツォンユーピン)、油条(中華風揚げパン)、肉餡の月餅、葱油拌麺、小籠包(ショーロンポー)、刀削麺、火鍋、しょうゆ味の温かい豆乳プリンとでも言えそうな「豆腐脳」(豆腐花)、さらに香港や広東に行くとよく見かける「餐包」、江南あたりで親しまれる「春餅」などを、記事などで複数回取り上げている。

 ちなみに、餐包は焼きたてのアンパンに似ているが、熱々の肉汁がおいしいチャーシューパンである。一方、春餅は小麦粉を薄く焼いた生地で緑豆もやし、豆腐乾、肉などを包んで食べる人気スナックである。

 中華料理やグルメの視点から取り上げた場合もあるが、経済、人物さらに政治や外交などの話題と絡んだ議論に活用した場合もある。

 たとえば、葱油餅を例に挙げよう。葱油餅が好きで、上海の裏路地で葱油餅づくりにコツコツと数十年間の歳月を費やしたある職人に、ジャーナリストとしての目を向けた。