「論理よりも直感が大事」と言われるようになった昨今。「論理は説明できるけど、直感は説明できない」というジレンマに、どう向き合うのか?
『ニュータイプの時代』が話題の山口周さんと、『ハートドリブン』の著者、株式会社アカツキCEO塩田元規さんによる特別対談。『ハートドリブン』の編集者・箕輪厚介さんも加わり、本音連発、議論はさらに白熱していく。オールタイプからニュータイプへの転換が求められている今、会社の存在意義とは?「企業にとっての本当の説明責任」とは?(構成:イイダテツヤ、撮影:竹井俊晴)

第1回:https://diamond.jp/articles/-/226664

【山口周×塩田元規×箕輪厚介】<br />どうでもいい会社が多すぎる!?<br />今こそ会社は「哲学」を語れ

塩田:よく「株主を説得するには、どうしたらいいですか?」と聞かれるんですけど、基本的に僕は「説得する必要はない」と思っているんです。もちろん説明はするんですけど、「説明すること」と「納得してもらうこと」がセットになり過ぎるのはよくないかなと。

僕が書いた『ハートドリブン』にしたって、これを読んで納得する人もいれば、納得しない人もいる。問題なのは「すべての人に納得してもらうべき」という観念。企業経営だって「すべての株主に納得してもらうべき」というのは違うと思います。

【山口周×塩田元規×箕輪厚介】<br />どうでもいい会社が多すぎる!?<br />今こそ会社は「哲学」を語れ塩田元規(しおた・げんき)
株式会社アカツキ創業者代表取締役CEO
横浜国立大学工学部電子情報工学科を経て、一橋大学大学院MBAコース(現:一橋ビジネススクールMBA)修了。新卒で株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、広告事業に従事。退職後、2010年6月に香田哲朗(取締役COO)と共同でアカツキを創業。2016年3月に東証マザーズ上場、2017年9月に東証一部へ市場変更。モバイルゲーム事業、リアルな体験を届けるライブエクスペリエンス事業を柱として、心が躍り感動とつながりをもたらすエンターテインメントをグローバルに展開。著書に『ハートドリブン 目に見えないものを大切にする力』(幻冬舎)。

「みんなに好かれる」というのは、結局は汎用的な会社になっちゃうから、やっぱり「僕たちはこう思っています」「こういう信念でやっています」ということをきちんと言って、株主の中に「それはよくない」という人がいるかもしれないけど、反対に全ての株主を一括りにして理解してもらおうと説明することの方が無理がある気がするんです。

どこの会社でも、株主に対しては「四半期ごとの数字がどうとか、こうとか」言っていますけど、企業としての本当の説明責任って、そもそも何を説明することなんだろうって思うんですよね。

山口:それ、いい表現だなぁ

塩田:会社として「売上が大事」「数字が大事」という信念があるなら、それを説明すればいいけど、「自分たちが信じていることは何か」「一番大事にしていることは何か」を説明することが、僕は一番大事だと思っているんです。そうじゃないと共感してもらえないから。

【山口周×塩田元規×箕輪厚介】<br />どうでもいい会社が多すぎる!?<br />今こそ会社は「哲学」を語れ山口周(やまぐち・しゅう)
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。著書に『ニュータイプの時代』『知的戦闘力を高める 独学の技法』(以上、ダイヤモンド社)『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)など。

山口:いや、でも、今のはすごく重要な指摘ですよね。結局「説明責任って、何を説明することなんだ」という。

「(売上や利益などの)数字がこうなった理由を説明する」と捉えている人が多いけど、本来、会社って別にあってもなくてもいい存在。それがわざわざあるんだから「何のために」「何をやりたいから」「何を大事にしているのか」ということをちゃんと説明するべきだと思うんですよ。