『ニュータイプの時代』が話題の山口周さんと、『ハートドリブン』の著者、株式会社アカツキCEO塩田元規さんによる特別対談。『ハートドリブン』の編集者であり、『死ぬこと以外かすり傷』の著者でもある箕輪厚介さんも加わり、今起きている時代の変化、今後求められる新しい考え方について語り合った。
2冊の著書で語られる「役に立つより、意味がある」「機能的価値から感情価値へ」という新しい価値観へのシフトとは何か?なぜ今あらゆるビジネスシーンで、こうした価値変革が起こっているのか?
(構成:イイダテツヤ、撮影:竹井俊晴)

塩田元規(以下、塩田):周さんの『ニュータイプの時代』を読ませてもらったとき、すごくびっくりしたんですよ、「言っていることが似ているな」って。

僕は『ハートドリブン』で「機能的価値から感情価値へ」という話をしているけど、周さんは「役に立つより意味がある」って話をしていますよね。

山口周(以下、山口):(塩田さんの腕時計をめざとく見つけて)あれ、ブライトリングじゃないですか、これこそまさに「役に立つより意味がある」ですよね。

箕輪厚介(以下、箕輪):そうなんですか?

山口:だって、これパイロット仕様で、普通の人には役に立たないんですよ。特に外側の計算尺なんてまったく役に立たない。電卓がなかった時代は、この計算尺を使って飛んでいたんですよ。

塩田:僕より絶対詳しい(笑)。僕なんか気に入ったものをパッと買っただけなんで。

箕輪:やっぱり「ハートドリブン」してますね。時計も機能的価値じゃないんだ(笑)。

山口:でも、塩田さんにとって、その時計を買う「意味」があるんですよね。そもそも塩田さんが「機能的価値から感情価値へ」って考えるようになったきっかけって何なんですか?

山口周(やまぐち・しゅう)
1970年東京都生まれ。独立研究者、著作家、パブリックスピーカー。ライプニッツ代表。慶應義塾大学文学部哲学科、同大学院文学研究科修了。電通、ボストン コンサルティング グループ等で戦略策定、文化政策、組織開発などに従事。著書に『ニュータイプの時代』『知的戦闘力を高める 独学の技法』(以上、ダイヤモンド社)『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)など。

塩田:もともと僕は一橋大のMBAに行ったんですけど、そこは成果主義真っ只中の時代に、結構「見えないものを大事にしよう」という内容だったんです。

山口:一橋って、そうなんですか?

塩田:「戦略のフレームワーク」というよりは、昔の本を読んだり、日本語をちゃんと使おうとか、そんなことをやっていました。僕は国立の方なんで伊丹(伊丹敬之)先生とか……。

山口:野中(野中郁次郎)先生とか?

塩田:そうです。暗黙知的な、哲学的な方だったんです。だから、どっちかって言うと「成果主義で切り捨てるだけじゃダメだよね」「目に見えないものを大事にしようね」というところがあったんです。

でも、僕は完全にそっち側ってわけでもなくて、その後のディー・エヌ・エー時代とか、経営を始めた頃は逆側に思いっきり走っていました。

箕輪:ディー・エヌ・エー時代は「合理性モンスター」でしょ?

塩田元規(しおた・げんき)
株式会社アカツキ創業者代表取締役CEO
横浜国立大学工学部電子情報工学科を経て、一橋大学大学院MBAコース(現:一橋ビジネススクールMBA)修了。新卒で株式会社ディー・エヌ・エーに入社し、広告事業に従事。退職後、2010年6月に香田哲朗(取締役COO)と共同でアカツキを創業。2016年3月に東証マザーズ上場、2017年9月に東証一部へ市場変更。モバイルゲーム事業、リアルな体験を届けるライブエクスペリエンス事業を柱として、心が躍り感動とつながりをもたらすエンターテインメントをグローバルに展開。著書に『ハートドリブン 目に見えないものを大切にする力』(幻冬舎)。

塩田:合理性で動くことが多かったですね。でも、根本はハートドリブンしていたと思うんですよ。でも組織っておもしろくて、経営者との距離があくと「経営者が思っているのはこうだ!」って社員が勝手に忖度し始めるんです。

後に、南場さんと会って話したり、周りの人に聞くと「近い人は、結構ハートドリブンしていた」みたいな話になるんですよ。

でも、僕らみたいな新卒一年目からすると「無茶苦茶、成果を出さないと死ぬ!」「評価基準はこうやってクリアしなきゃダメ」ってことで、必死に合理性に走るんです。僕もそうでした。だから、そのときの自分を振り返ると、超合理性に走っているイヤなヤツだったと思いますよ。

箕輪:『ハートドリブン』でも自己分析しているよね。