【ベルリン】独大手高級自動車メーカーは数十年にわたり巨額の利益を稼ぎ出し、高級車の基準を設定してきた。しかし、競争激化や不正疑惑、IT(情報技術)に強い新興勢力の台頭で勢いを失っている。
そうした要因が独高級車ブランドに打撃を与えている現状が22日に浮き彫りになった。「メルセデス・ベンツ」ブランドを持つダイムラーは9カ月間で3度目となる利益見通しの下方修正を発表し、昨年は50%近い減益になったことを明らかにした。さらに、米電気自動車(EV)大手テスラが時価総額で独フォルクスワーゲン(VW)を追い抜き、世界第2位の自動車メーカーとなった。
ダイムラー、VW、BMWは新車販売台数では継続的に過去最高を更新しているが、利益率は縮小し、米国などの市場ではシェアを失っている。規制面の不祥事による評判の悪化、自動車販売の世界的な減速、EV投資によるコスト上昇などが原因だ。
その恩恵を受けているのが、テスラなどの新たな競合やスウェーデンの高級乗用車メーカー、ボルボ・カーなど巻き返しを図るライバル企業だ。独企業はEVの開発に数百億ドル単位の金を投じているが、テスラに水をあけられている。テスラはネットにつながるコネクテッドEVの新しい業界でトレンドセッターとみなされている。
「今日の基準はテスラだ」。独デュイスブルク・エッセン大学自動車研究所(CAR)のフェルディナント・ドゥーデンヘッファー所長はこう話す。「今から10年後、テスラはBMWと同規模になっているだろう」
ダイムラー、BMW、VW、アウディがそれぞれ直面している法律上の問題は、単に高級車ブランドを生み出した企業のイメージをおとしめているだけではない。新技術に投資する必要のある財務リソースを消費してもいる。ダイムラーはディーゼル車の排ガス規制違反疑惑の捜査を受け、過去3四半期に40億ドル以上の引当金を計上した。
BMWは、排ガス浄化技術の開発競争を制限するため他の自動車メーカーと談合したとする判断を巡り、欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会と争っている。同社は昨年、この反トラスト法(独禁法)訴訟に関わる法的費用として10億ドル以上を引き当てた。
さらにBMWは12月、販売数値を偽って業績を実際よりもよく見せようとしていた疑いがあるとして、米証券取引委員会(SEC)が同社の商慣行を調査していることを明らかにした。同社はSECに協力していると述べたが、この件に関するコメントは差し控えた。SECはコメントの要請に応じなかった。