チーム・リーダーシップ:チーミングのソフトウエア
チーミングのハードウエアは、ソフトウエアと同じく配慮が行き届いて初めてうまく機能する(囲み「チーミングを成功に導く行動」を参照)。
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どんなチームワークにもある課題とは「チームで仕事をしている人は、1人で仕事をしている人より、他人の判断や行動の影響を受けやすい」ことである。メンバーが変わらないチームであれば、その克服のために、互いを知り、信頼感を培うための時間を与えられる。そうすれば、ざっくばらんな話もしやすくなるし、相手の言葉に耳を傾けることもでき、柔軟な対応も可能になる。
しかし、常にメンバー同士の関わりが変動する場合、この課題の難易度は増す。チーミングのソフトウエアは、見知らぬ同僚との関係を快適にするというより、新しい働き方を心地よくするものである。
新しい働き方では、たとえ信頼関係がなかったとしても信頼しているように振る舞うことが求められる。もちろん、相手のことがわからないのだから信頼などできない。リーダーは次の4つのソフトウエアを自由に活用できる。すなわち、目的を強調する、安心感を持たせる、失敗を受け入れる、衝突を逆手に取る、の四点である。
目的を強調する
現在の問題をはっきりさせることは、どんな状況においても士気を高めるためにリーダーが用いる、基本的な手段である。この方法は特にチーミングが求められる状況下で重要になる。
目的とは突き詰めれば、価値観の共有である。それにより会社やプロジェクトの存在意義がおのずと明らかになり、それがどんなに多様化して型にはまらないチームであっても活気につながる。
目的が明確な場合も、それを強調する必要がある。2010年、チリの鉱山作業員33人の70日間にわたる歴史的な救出もそうだった。コデルコ(チリ銅公社)の上級技術者、アンドレ・ソウガレットがこの複雑な救出活動を指揮していたが、チーミングをともにしている数十人の技術者や地質学者に対し、自分たちが救おうとしているのは人の命であることを繰り返し強調した。
このおかげで、担当分野も違えば所属企業も違い、出身国も異なる専門家たちが迅速に意見の相違を解消し、協力し合うことができた。窮地を脱するアイデアを思いついたとしても、それで競い合うことはなかった。
モトローラのジェリコと〈RAZR〉チームはデザインと機能性を兼ね備えた画期的な製品を開発していることを強調した。またポリマーの開発者たちには、できるだけ早く、効率的に顧客ニーズを満足させるというミッションが託されていた。